経腸栄養法(読み)けいちょうえいようほう(英語表記)enteral nutrition

日本大百科全書(ニッポニカ) 「経腸栄養法」の意味・わかりやすい解説

経腸栄養法
けいちょうえいようほう
enteral nutrition

腸管消化管)を介して栄養剤を投与する栄養法の総称。腸管を用いるという点では、通常の食事方法である「経口摂取」も経腸栄養法に含まれるが、医療現場では経口摂取以外の栄養法として、消化管を使えない場合に静脈から栄養剤を投与する「経静脈栄養法」と、消化管機能に問題のない場合に、専用の管(チューブ)を用いて直接消化管に栄養剤を注入する「経腸栄養法」の二つに分類する考え方が一般的である。

 人間にとってもっとも理想的な栄養法は、「口から食べる」経口摂取であるが、嚥下(えんげ)機能に問題がある等なんらかの理由で経口摂取ができなくなった場合、腸の機能に問題がなければ、まずはより生理的な経路である経腸栄養法が選択される。経腸栄養法には、腸粘膜萎縮(いしゅく)を予防し、消化管機能を維持することができるという利点がある。

 経腸栄養法には、鼻腔(びくう)から胃や腸に管を挿入して栄養剤を注入する「経鼻経管栄養法」と、体表に作った穴(瘻孔(ろうこう))から胃や腸に栄養剤を注入する「胃瘻(胃瘻栄養法)」「腸瘻(腸瘻栄養法)」などがある。

[横山美樹 2022年12月12日]

経鼻経管栄養法

鼻腔から胃に管を挿入し栄養剤を注入する「経鼻胃管栄養法」がもっとも一般的である。そのほかに、鼻腔から十二指腸まで管を挿入する「経鼻十二指腸栄養法」、鼻腔から空腸まで管を挿入する「経鼻空腸栄養法」がある。瘻孔造設術が必要となる胃瘻や腸瘻と比べ身体侵襲は小さいが、鼻腔から管が挿入されているため患者の不快感が強いこと、栄養剤が管をつたって逆流することにより誤嚥を起こしやすいこと、また嚥下機能が低下しやすいという欠点があるため、短期間(通常4週間以内)の栄養手段として用いられる方法である。

[横山美樹 2022年12月12日]

胃瘻(胃瘻栄養法)

内視鏡下で腹部皮膚表面と胃壁に小さな穴(直径5~6ミリメートル程度)を開けて管を通し、留置した管を介して栄養剤を注入する方法。穴を開けるための処置を「経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)」というため、胃瘻栄養法自体のことをPEG(ペグ)とよぶ場合もある。経鼻経管栄養法と比較して胃瘻造設に伴う侵襲は大きいが、患者にとって不快感がないこと、管理が比較的楽であることから、近年広く用いられている方法である。また口腔内に管が入っていないことから嚥下機能への影響がなく、経口摂取の併用も可能である。合併症としては、瘻孔部の感染びらん、瘻孔周囲の皮膚の炎症がおもなものである。

[横山美樹 2022年12月12日]

腸瘻(腸瘻栄養法)

内視鏡を用いて胃瘻から十二指腸、空腸へ管を留置し、栄養剤を注入する方法と、空腸に造設した瘻孔から栄養剤を注入する方法がある。特徴は、胃瘻と同様である。

[横山美樹 2022年12月12日]

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