日本大百科全書(ニッポニカ) 「納札(のうさつ)」の意味・わかりやすい解説
納札(のうさつ)
のうさつ
社寺に参詣(さんけい)する人が信心の意を表し、祈願や記念のため、札(ふだ)を納めること。札には生国、生年、姓名などを記入した。札は紙札、木札であるが金属製のものもあった。西国(さいごく)三十三所、坂東(ばんどう)三十三所などの霊場には巡礼者の札を納める札所(ふだしょ)が設けられていた。納札の風習はいつごろから始まったか不明であるが、古い物としては近江(おうみ)(滋賀県)の石山寺、陸中(岩手県)の中尊寺などに残された天文(てんぶん)年間(1532~55)のものが知られている。
この納札の風習は、千社札というものが流行してくると、信心とは別に趣味的なものもでき、札にいろいろの趣向を凝らし、同好者の集まりなどで札の交換をするようになった。
[大藤時彦]
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