籠漁業(読み)かごぎょぎょう(英語表記)pot fisheries

改訂新版 世界大百科事典 「籠漁業」の意味・わかりやすい解説

籠漁業 (かごぎょぎょう)
pot fisheries

籠の中に水産生物を誘集し漁獲する雑漁業の一つ。籠の定義は明確でなく,材料・構造はさまざまだが,一般に鉄,タケ,木などで枠をつくり,これに網をはり,口をつけたものが使われる。形も円筒円錐台直方体,かまぼこ形などさまざまである。底生性の水産生物,主としてカニ類,エビ類,貝類などを対象とするが,魚,イカ類などを対象とすることもある。単独で設置されることもあるが,日本では長い幹縄に多数の籠を枝縄でつけて設置するはえなわ式がほとんどである。餌を入れるが,産卵期のイカをねらう時のようにツゲ小枝などを入れることもある。漁獲対象とするものにはアナゴ,ガザミ,ヒラツメガニ,イセエビ,アワビ,ウニなど比較的浅い内湾や岩礁地帯にすむものから,ケガニ(水深50~80m),ヒメエゾボラ(90~120m),ズワイガニ,ホッコクアカエビ,ボタンエビ(200~500m),ベニズワイガニ(300~700m,2700mまでの漁獲記録がある),バイ類(300~800m)と沖合のかなり深い所にすむものまでさまざまである。問題は籠漁業の対象として重要な種類には,移動性が低く成長成熟が遅いものや,乱獲に陥りやすいものが多いことで,漁獲開始後じきに浅いところではとれなくなり,深い所へ漁場を開拓していかなければならなくなった例も多い。

 こういった資源保護に十分注意すれば,漁具構造が簡単で操業も容易であり,また他の漁法では容易に開発できない深海資源の漁獲にも適しており,底引網のように漁場を荒らさないなど利点が多い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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