日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
筑紫山地(つくしさんち)
つくしさんち
九州北部を北東から南北に福岡、佐賀、長崎三県にまたがる山地。「ちくしさんち」ともいう。断層性の盆地や河谷によって多数の山塊に分断され、東部山地群は企救(きく)、貫(ぬき)、福智(ふくち)、孔大寺(こだいじ)、三郡(さんぐん)の各山地からなり、西部山地群は脊振(せふり)、天山(てんざん)の山地からなる。地帯構造上は西南日本の内帯に属し、中国山地の南西延長部分となる古い褶曲(しゅうきょく)山地で、おもに古生層の基盤とこれを貫く花崗(かこう)岩、地溝に堆積(たいせき)した古第三紀層よりなる。断層運動は紫(むらさき)川断層谷以東は中国山地と同じ北東走向であるが、それ以西では北西走向となって地溝を形成、古第三紀夾炭(きょうたん)層が堆積して筑豊(ちくほう)、粕屋(かすや)、唐津(からつ)、佐世保(させぼ)など多くの炭田を形成した。山腹は急傾斜であるが、頂上部は緩傾斜の平坦(へいたん)面が広がり、脊振山の1055メートルを最高に東西で高度を減じ、海中に没する。貫山地の平尾台(ひらおだい)、福智山地の香春(かわら)岳、船尾(ふなお)山などに石灰岩が分布してカルスト地形を生じ、セメント工業の原料として利用されている。大半が北九州国定公園、筑豊、太宰府(だざいふ)、脊振雷山(らいざん)の各県立自然公園に含まれており、四季を通じハイキングなどを楽しむ行楽客も多い。
[石黒正紀]