秋山記行(読み)あきやまきこう

改訂新版 世界大百科事典 「秋山記行」の意味・わかりやすい解説

秋山記行 (あきやまきこう)

越後塩沢に生まれた鈴木牧之ぼくし)の著。信越国境中津川沿いの,平家の落人村と伝えられる秋山郷の紀行文で,十返舎一九の依頼により1828年(文政11)9月に秋山郷を探訪し,翌年には稿本が完成している。牧之は訪れた村々で,今日の民俗学のような調査を行い,1週間という短い日数にもかかわらず,方言衣食住生産信仰村人の社会経済関係などのほか,人々の動作や態度に及ぶまできめ細かな観察をしている。また,川漁狩猟,焼畑,〈あんぎん〉という着衣など,この地に特徴的な生活もしるしており,同じ牧之の《北越雪譜》とともに民俗誌の先駆的業績として評価されている。
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日本歴史地名大系 「秋山記行」の解説

秋山記行
あきやまきこう

二巻

別称 信越国境秋山記行 鈴木牧之(儀三治)

成立 天保二年

原本 山本清氏

解説 文政一一年に信濃・越後国境の秋山郷を探訪した著者の見聞記。村々の概況・生産・生活などについて自身の観察および村人からの聞取りを詳細に記し、また多数の自筆彩色画もよく風物風俗を伝える。

活字本 越佐叢書五・日本庶民生活史料集成三・東洋文庫一八六ほか

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の秋山記行の言及

【秋山郷】より

…行政的には,長野県下水内郡栄村に属する切明(きりあけ),和山,上ノ原,屋敷,小赤沢の5集落,新潟県中魚沼郡津南町に属する大赤沢,中ノ平,前倉,上結東(かみけつとう),見倉,清水川原,逆巻(さかさまき),穴藤(けつとう)の8集落からなっている。鈴木牧之の《秋山記行》で著名である。伝承によると平家の落人集落であるというが,上州から野反湖経由で入った新田系の隠田百姓村だという説もあり,定かではない。…

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