私出挙(読み)シスイコ

デジタル大辞泉 「私出挙」の意味・読み・例文・類語

し‐すいこ【私出挙】

奈良平安時代、個人所有の稲・酒・金銭などを貸しつけて、利息を取ること。→公出挙くすいこ

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精選版 日本国語大辞典 「私出挙」の意味・読み・例文・類語

し‐すいこ【私出挙】

〘名〙 奈良・平安時代、私人稲粟銭財などの私財を他に貸し与え、利息を増収すること。銭財の私出挙の利息は六〇日毎に八分の一、稲粟の私出挙の利息は変遷はあるが一年(春から秋)に五割の公定であることが多かった(共に単利のみ)。
勘仲記‐弘安一〇年(1287)七月三日所引大治二年五月一九日・太政官符「応止権門勢家使等猥責徴私出挙物事」

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「私出挙」の解説

私出挙
しすいこ

律令制下,民間で行われた私稲の貸借。令の規定では私稲の出挙も認めており,利息は10割を限度としていたが,711年(和銅4)5割以下とした。さらに737年(天平9)稲穀の私出挙自体を禁止し,違反者には違勅罪を科し,稲は没官(もっかん),国・郡司は解任することが定められた。公(く)出挙の円滑な運営を図るための施策であろう。これ以後,私出挙は一貫して禁止されたが,実際にはほとんど守られなかった。また銭貨私出挙についても,797年(延暦16)に利息は5割を限度とすることとされた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「私出挙」の解説

私出挙
しすいこ

出挙の一種で,地方豪族などが貸付けた。

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世界大百科事典(旧版)内の私出挙の言及

【飢饉】より

…したがって中世になると,飢饉の際,荘園領主と荘民との間で年貢公事などの減免や領家の倉からの穀物施与などの措置がとられるようになったが,朝廷としての備荒対策はほとんどとられなくなっていく。また一般的には,飢者は富裕者が私的に蓄えた穀物などをもって行う私出挙に頼らざるをえなくなる。私出挙は律令制下でも存在したが,10世紀以降の公共機能の低下にしたがって,飢饉の際もっぱらこれに依存することになっていく。…

【出挙】より

…【池田 温】
【日本】

[古代]
 出挙は大化前代から屯倉(みやけ)や国造領で行われていたが,制度的に整備されるのは7世紀末から8世紀初頭である。出挙には公的な性格をもつ公出挙(くすいこ)と民間における私出挙がある。令の規定では債務契約は官の処理を経ない自由契約によること,複利計算は許されず利息は10割を限度とすること,債務不履行の際において質物で返済できないときや質物契約のない場合は家財が差し押さえられること,それでも不足するときは労働によって弁済することなどが定められている。…

【利息制限法】より

…ちなみに,ドイツ(民法138条2項,246条,刑法302条の1),オーストリア(民法879条),スイス(民法21条),フランス(民法1907条)では暴利禁止の規定を設け,イギリスではMoneylenders Act(1900‐27)で過酷不当な高利を禁止している。 日本でも,古く律令時代に私人間の利息付貸籾契約である私出挙(しすいこ)(出挙)を禁止し,武家法時代にも利息制限に関する法制をみるが,近代法典として制定されたのは,1877年の太政官布告旧利息制限法によってであった。これは,主として消費信用における高利貸の不当な徴利を防止するために制定されたものである。…

※「私出挙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」