砧・碪(読み)きぬた

精選版 日本国語大辞典 「砧・碪」の意味・読み・例文・類語

きぬた【砧・碪】

[1] 〘名〙 (「きぬいた(衣板)」の変化した語)
① 槌(つち)で布を打って柔らかくし、つやを出すために用いる木、または石の台。また、それを打つことやその音をもいう。《季・秋》
※延喜式(927)一「供神今食料〈略〉槌二枚 砧二枚」
※俳諧・都曲(1690)下「声すみて北斗にひびく砧哉〈芭蕉〉」
② ①の形をした枕。
③ (①を打つ木槌の形をしているところから) 円筒形の細長いガラス瓶。
随筆・中陵漫録(1826)五「長崎に来る者は火済に入る。遠路故、味の変る故に皆是を用ゆ。是を長崎にてきぬたと云」
能楽小道具の一つ。竹を組んで台とし、その上に木の丸棒をわたし、それに白の練絹(ねりぎぬ)をかけたもの。(二)に用いる。
砧踊(きぬたおどり)の唄。また、河東節、箏曲、上方唄などにこの名がある。
※雑俳・柳多留‐四七(1809)「三みせんできけば砧はねむくなし」
※滑稽本・風来六部集(1780)放屁論「碪(キヌタ)・すががき・三番叟(さんばそう)
[2] 謡曲。世阿彌作。各流。四番目物。訴訟のため都にある夫を留守の妻が慕うあまり砧を打って心を慰めるが、恋慕の情は増すばかりで、遂に恋い死ぬという筋。

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