石見府中(読み)いわみふちゆう

日本歴史地名大系 「石見府中」の解説

石見府中
いわみふちゆう

中世に成立したかつての石見国府周辺の広域名称で、中世伊甘いかみ郷のうち、現浜田市下府しもこう町・上府町とその周辺部をさしたと推定される。文明元年(一四六九)一二月二九日の三隅豊信知行書立(益田家文書)で、三隅氏の所領の一つとして「府中国衙」がみえる。石見国の場合、例えば府中八幡宮国府八幡宮(康暦元年八月日「沙弥某書下」・同二年一二月二一日「沙弥某証状」府中八幡宮文書)、伊甘郷を国府(永徳三年八月一〇日「益田祥兼置文」益田家文書)ともよんでいて、国府は府中と同義に理解されていたようで、府中八幡宮文書のうち最も時代のさかのぼる文書が建治元年(一二七五)と推定される六月二六日の左衛門尉某奉書であることから、中世府中の成立がこれ以前にさかのぼることは間違いないと推定される。なお府中そのものの史料上の初見は「三代実録」貞観一三年(八七一)四月三日条で、「府中神」に従五位下の神階を授けるとある。しかしこれは古代の石見国府域にあった神社(伊甘神社境内の庄社とされる)のことで、中世の石見府中とは歴史的な意味内容が異なる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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