短冊・短籍・短尺(読み)たんざく

精選版 日本国語大辞典 「短冊・短籍・短尺」の意味・読み・例文・類語

たん‐ざく【短冊・短籍・短尺】

〘名〙
① 字を書いたり、物の標(しるし)に付けたりなどする小さく細長い紙。たんじゃく。
※続日本紀‐天平二年(730)正月辛丑「賜酒食、因令短籍、書以仁義礼智信五字、随其字而賜物」
※枕(10C終)三一四「これは、なにの御たんざくにか侍らん。物いくらばかりにかといへば、ただ読めかしといふ」
和歌俳句などを書く細長い料紙。寸法流派により異なるが、ふつうは縦一尺一寸五分(約三五センチメートル)、幅一寸八分(約六センチメートル)。たんじゃく。
※正徹物語(1448‐50頃)上「やがて懐帋短冊もかいまくり置きて、心得られねどもおけば、我歌の位のあがることも有るまじき也」
③ 和歌などを細長い料紙に書き、批評しあって遊ぶこと。また、その会やその和歌。たんじゃく。
※藤河の記(1473頃)「十三日、正法寺にて短冊の評あり」
寺院の論義法要で問答の内容を記した紙、または木札。たんじゃく。
※醍醐寺新要録(1620)「聖得業記云、次短冊はさむことは、東大・興福各別也」
⑤ 江戸時代通用の一分金の俗称。一分金はすべて長方形なので、俗にしゃれて呼んだもの。短冊一分。
※洒落本・風俗砂払伝(1780)「三徳より小判一両取出し〈略〉『おやおやついぞねヱたんざくとは何のこって御せへやす』『はてさて小粒のこっちゃはへ、身共が国ではかく言はへ』」
⑥ 「たんざくがた(短冊形)」の略。〔古今料理集(1670‐74頃)〕
[語誌](1)古く、諸司諸国の官人を任ずる除目や、位階昇進の手続きである定考(こうじょう)及び擬階奏(ぎかいのそう)において、短冊に、叙位・昇進すべき人の名前を書いて、官ごとにこよりで綴じ、重ねて箱に入れた。
(2)困窮者に米塩を支給する賑給(しんごう)、別名賑恤(しんじゅつ)において、数量を記入した短冊を現物と引き替える、といったような用途にも使われた。更に、吉凶を占う際のくじの料紙、あるいは、和歌・漢詩を書くための料紙、また、今日の付箋に相当するもの等、種々の用途に当てる、細長く切った紙を、総じて「短冊」と称した。
(3)和歌を書くための料紙をもっぱら指すようになるのは、院政期以降といわれる。

たん‐じゃく【短冊・短籍・短尺】

〘名〙
① =たんざく(短冊)色葉字類抄(1177‐81)〕
太平記(14C後)一三「月の夜、雪の朝、興に触れて読み棄て給へる短冊(タンジャク)共の、此彼(ここかしこ)に散り乱れたるも」
武具指物(さしもの)の名。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報