三徳(読み)さんとく

精選版 日本国語大辞典 「三徳」の意味・読み・例文・類語

さん‐とく【三徳】

〘名〙 (「さんどく」とも)
① (「徳」は道の意) 人、または君主として守るべき根本の三つの道。三種類の徳目。正直であること、剛毅であること、困難に耐えることの三つ(書経‐洪範)、片寄らないこと、仁や義に機敏なこと、祖先を敬うことの三つ(周礼‐地官・師氏)、天の徳、地の徳、人の徳の三つ(大戴礼‐四代)、智と仁と勇の三つ(中庸)など。
※懐風藻(751)初春侍宴〈大伴旅人〉「穆々四門客、済々三徳人」
② 仏語。
(イ) 仏果にそなわる三つの徳。衆生を救いたいという願いによってめぐみを与える恩徳と、一切の煩悩を断ち切る断徳と、平等智によって一切を見通す智徳の三つ。
※性霊集‐九(1079)高尾山寺択任三綱之書「選此三仁、称彼三徳、三徳即一切徳」
(ロ) 大涅槃にそなわる三つの徳。一切にそなわる真如としての法身と、悟りの智慧としての般若と、煩悩の束縛を離れた解脱の三つ。〔真如観(鎌倉初)〕
(ハ) 諸仏の徳を因果の方面から見たもの。三大劫の修行を満たした因円徳と、智断などの修行を満たした果円徳と、一切衆生を解脱させる恩円徳の三つ。
(ニ) 数論派(すろんは)で、すべてのものの本性としての三つの徳。喜・憂・闇の三つで、これから善悪好醜などが生ずるとする。
③ (「徳」はためになるの意) 三つの用途があること。三通りに使えること。また、そのもの。
(イ) 江戸時代に流行した紙入れの一種。更紗(さらさ)緞子(どんす)などで作り、鼻紙を入れる口の反対側にも口を付け、楊枝・書付けなどを入れるようにしたもの。
※談義本・当世穴穿(1769‐71)五「とかく仕なれた三徳(トク)がいつも丁法(てうほう)でよいに」
(ロ) 江戸時代の燭台の一種。置いておく燭台にも、懸け灯蓋にも、手燭にもなる装置のもの。
※雑俳・湯だらひ(1706)「三徳を医者かとおもやあんど也」
演劇殺陣(たて)の一つ。両方の手のひらと頭とをささえにして、さか立ちするもの。
大麦の栽培品種。稈(かん)はよく分糵(ぶんけつ)して、丈が高い。収穫量は多く、実は中粒で白色
⑥ 釣りの仕掛け道具の一つ。ヘラ鮒釣りの場合など、道糸の接続と両てんびんの鉤素(はりす)掛けを同時に仕掛けられるもの。
⑦ 仕掛け糸の結び方の一つ。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「三徳」の意味・読み・例文・類語

さん‐とく【三徳】

人、または君主として守るべき三つの徳目。「中庸」で説かれた、など。
仏語。
仏果にそなわる三つの徳。衆生に恵みを与える恩徳、煩悩ぼんのうを断ち切る断徳、智慧をもって平等に見る智徳。
涅槃ねはんの三つの徳。真如としての法身智慧としての般若はんにゃ煩悩からの離脱としての解脱げだつ
《三つの用途があるところから》
㋐釣りの小道具の一。糸・重り・鉤素はりすを接続する小形の片天秤かたてんびん。ハゼ釣りに用いる。
㋑江戸時代に流行した紙入れの一種。鼻紙・書き付け・楊枝ようじを分けて入れた。
㋒江戸時代の燭台の一種。置いたり掛けたり、また提げたりできるようになっている。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「三徳」の読み・字形・画数・意味

【三徳】さんとく

三つの徳目。〔書、洪範〕乂(をさ)むるに三を用ふ。~一に曰く正直、二に曰く剛克、三に曰く柔克。~剛克を沈潛にし、柔克を高にす。

字通「三」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三徳」の意味・わかりやすい解説

三徳
さんとく

仏教,インド哲学,儒教における3つの徳。 (1) 仏教用語では如来の徳を恩徳,断徳,智徳に,また修行の立場から諸仏の徳を因円徳,果円徳,恩円徳の3つに分ける。 (2) 『涅槃経』の説く大涅槃の不一不異の法身徳,般若徳,解脱徳のこと。 (3) インドのサーンキヤ学派の純質,激質,翳質という3つの根本原質。 (4) 朱子学における智,仁,勇の3つの素質。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本の企業がわかる事典2014-2015 「三徳」の解説

三徳

正式社名「株式会社三徳」。英文社名「SANTOKU CORPORATION」。非鉄金属工業。昭和24年(1949)「三徳工業株式会社」から分離独立し「三徳金属工業株式会社」設立。平成12年(2000)現在の社名に変更。本社は神戸市東灘区深江北町。産業資材メーカー。磁石の材料となるネオジム・サマリウムなど希土類の高純度化合物・各種合金を製造。

出典 講談社日本の企業がわかる事典2014-2015について 情報

デジタル大辞泉プラス 「三徳」の解説

三徳

株式会社三徳が展開するスーパーマーケットのチェーン。主な出店地域は東京都・神奈川県・千葉県。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android