眼部帯状疱疹(読み)がんぶたいじょうほうしん(英語表記)Herpes zoster ophthalmicus

六訂版 家庭医学大全科 「眼部帯状疱疹」の解説

眼部帯状疱疹
がんぶたいじょうほうしん
Herpes zoster ophthalmicus
(眼の病気)

どんな病気か

 左右いずれかの上まぶた、または下まぶたに発疹(ほっしん)浮腫(ふしゅ)(むくみ)が生じ、痛みを伴う病気です。

原因は何か

 水痘(すいとう)帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスによる感染症です。

 このウイルスは、初感染の時は水痘みずぼうそう)として発熱や全身の発疹を起こし、2~3週間で治りますが、その後ウイルスは潜伏し、体の抵抗力(免疫能)が低下した時に再活性化します。

 たとえば高齢者、糖尿病やがんの患者さん、ステロイド薬を長期使用している人、また免疫抑制薬を使用している人などの場合です。しかし、まったく健康に問題のない人に発症することもあります。

 発疹は通常、1本の神経分布に沿って起こり、顔面以外では胸・腹部がよく発症する部位です。

症状の現れ方

 まず、左右いずれかの上まぶたから前額部にかけて痛みだし、次いで皮膚には紅斑赤み)ができ、小水疱(しょうすいほう)みずぶくれ)となります。上まぶたから前額部の浮腫も起こります。水疱にはやがてうみがたまり(膿疱化(のうほうか))、そのあとに痂皮(かひ)(かさぶた)となります。普通、2週間以内に治ります。

 下まぶたが(おか)される場合もありますが、この場合、上まぶたは侵されません。なぜなら、帯状疱疹は通常、1本の神経の分布に沿って発症しますが、上まぶたと下まぶたではとおっている神経が異なるためです。ちなみに、上まぶたは三叉神経第1枝、下まぶたは三叉神経第2枝が分布しています(図3図4)。

 発疹が治ったあと、つらい神経痛が残ることがあります。症状が重ければ、ペインクリニックで専門的治療が必要になります。

検査と診断

 血液検査で、ウイルスに対する抗体価の上昇を調べます。水疱の内容物からウイルスを検出すればいちばん確実です。

治療の方法

 抗ウイルス薬(ゾビラックス)の点滴・内服、ステロイド薬の内服などを行います。皮膚には軟膏(アンダーム軟膏)を塗ります。

病気に気づいたらどうする

 痛みを伴う発疹が出たら、皮膚科または眼科を受診します。皮膚は清潔にし、水疱はつぶさないことが肝心です。

森 秀夫


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「眼部帯状疱疹」の解説

がんぶたいじょうほうしん【眼部帯状疱疹 Ocular Herpes Zoster】

[どんな病気か]
 帯状疱疹ウイルスが三叉神経(さんさしんけい)第1枝に沿って発疹(ほっしん)をおこし、痛みをともなう病気です。発疹は上下のまぶた(眼瞼がんけん))、頬(ほお)、鼻にまで広がることがありますが、顔の反対側にはおよばないのが特徴です。
[治療]
 発疹の治療には抗ウイルス軟膏(なんこう)を使用します。たいせつなことは、眼球(がんきゅう)内に炎症がおよばないようにすることで、放置すると角膜(かくまく)の濁りを残したり、緑内障(りょくないしょう)(「緑内障(青そこひ)」)を生じることがあります。まぶた、鼻根(びこん)付近の帯状疱疹は、必ず眼科医の診断を受けてください。眼科の治療では、抗ウイルス薬や副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬(ステロイド)を使用します。

出典 小学館家庭医学館について 情報