直流増幅器(読み)ちょくりゅうぞうふくき(英語表記)DC amplifier

改訂新版 世界大百科事典 「直流増幅器」の意味・わかりやすい解説

直流増幅器 (ちょくりゅうぞうふくき)
DC amplifier

音声信号は数十Hz以下の信号成分はなく,コンデンサーを通して伝送できる。これに対して,測定器などでは時間的に変化しない直流分を含む信号を増幅しなければならず,このような増幅器を直流増幅器と呼ぶ。直流増幅器には直結形の多段増幅器で信号をそのまま増幅するものと,信号をいったん高周波の搬送波で変調して交流増幅器で増幅し,同じ搬送波による同期整流を用いて復調して直流分を含む信号に戻す変調形直流増幅器の2種類がある。前者典型はIC演算増幅器で直流利得百数十dB,入力オフセット電圧数mV以下の特性が得られている。直結形増幅器の場合は温度変化で動作点が移動するドリフトが最大の問題である。変調形直流増幅器の変復調素子としてはリレーと同じ構造の機械的チョッパーが永く用いられてきたが,寸法の大きさ,接点寿命,搬送周波数を400Hz程度にしか上げられないなどの欠点から,半導体チョッパーにとって代わられた。半導体チョッパーはバイポーラトランジスターや電界効果トランジスターをスイッチとして用い,動作周波数,寿命の点ではるかに有利でIC化も可能である。最近ではフォトカプラーを変復調素子に使う例もあり,信号系と搬送波系を電気的に分離できる利点がある。特殊目的には容量を機械的に振動させる振動容量形変調器や,磁性体の磁気飽和特性を利用した磁気変調器も用いられている。
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