磁性体(読み)ジセイタイ

デジタル大辞泉 「磁性体」の意味・読み・例文・類語

じせい‐たい【磁性体】

磁性のある物質強磁性体常磁性体反磁性体などに分けられる。
特に、強磁性体のこと。

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精選版 日本国語大辞典 「磁性体」の意味・読み・例文・類語

じせい‐たい【磁性体】

〘名〙 磁性のある物質。また、磁場の内で磁化される物質。磁場の内にあるときだけ弱い磁化を示し、外部磁場と同じ方向に磁化される常磁性体、反対の方向に磁化される反磁性体、特に強く磁化され、磁場を離れてもなお強い磁石になっている強磁性体とに分類されるが、ふつう磁性体といえば強磁性体をさす。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「磁性体」の意味・わかりやすい解説

磁性体
じせいたい

物質は、それを磁場の中に置いたとき、その磁化に従って強磁性体、常磁性体、反磁性体に区別される。したがって、この用例では単に磁性体というのは意味がない。強磁性体は磁場の中で強く磁化される物質であり、常磁性体は弱く磁化される物質であり、反磁性体は弱くしかも磁場の方向とは反対方向に磁化されるものである。この定義では、強磁性体と常磁性体との区別は、単に磁化の強さの程度の差であって、その差異は不明確であるようにみえる。

 実は、強磁性体には質的な特徴がある。強磁性体は磁場によって磁化されるのではなく、もともと磁化されているのである(これを自発磁化という)。一見磁化されていないようにもみえるのは、それが磁区に分割されているからである。一つ一つの磁化の方向は違っているが、磁場の中に置かれるとそれらは磁場の方向を向く。このようにして強磁性体の磁化がおこるから、飽和といわれるのは全磁区の磁化の方向が平行になったことであり、飽和磁化の強さは自発磁化の強さに等しいとみてよい。このような自発磁化は温度を上げると小さくなり、ある温度(キュリー温度)でゼロとなる。その温度以上では物質は自発磁化をもたず、常磁性となる。したがって、常磁性体とは、どのように低い温度でも常磁性であるものをいう。しかし、日常的用語では室温で強磁性のものを強磁性体あるいは単に磁性体とよぶことがある。これに対する日常的なことばとして非磁性体がある。

 強磁性体では、それをミクロにみれば、磁気担い手(原子など)の磁気モーメントの方向がそろっている。それで自発磁化をもつのである。それに対して、常磁性体(ランジュバン型常磁性体)では、磁気の担い手の磁気モーメントの方向はばらばらである。反磁性体ではそれらはもともと磁気モーメントをもっていない。それで、強磁性体の自発磁化は、原子の磁気モーメントの秩序の現れとみることができる。しかし、秩序というのは原子の磁気モーメントの方向が一方向に全部そろうものとは限らない。それらが交互に反対方向を向くというのも一つの秩序である。そのような物質はいろいろあることが知られている。それらは、自発磁化をもたないので、先に述べた意味では強磁性体ではない。しかし秩序をもつ点は普通の常磁性体とは異なる。それでこのような物質を反強磁性体という。これとは多少異なる秩序をもった物質でも自発磁化をもたないものはすべて反強磁性に入れてよい。反強磁性体の秩序もある温度(ネール温度)以上では失われ、普通の常磁性となる。

 反強磁性体と同様な秩序をもっているが、2種類以上の原子があって、そのモーメントが打ち消されないときには、自発磁化があることになる。このようなものは、見かけ上は強磁性と異ならないし、実用上も強磁性体として取り扱われるが、とくにフェリ磁性体の名でよばれる。フェリ磁性体にも、もっと複雑な秩序のものがある。フェリ磁性体の自発磁化の失われる温度も、強磁性体と同じくキュリー温度とよばれている。

 反強磁性体の秩序と似た秩序であるが、交互の磁気モーメントの方向が正確に反対方向ではなく、わずかに傾いているものがあって、弱いながらも自発磁化をもつものがある。そのような物質を弱・強磁性とよんでいる。代表的なものはヘマタイト(α-Fe2O3)である。このような磁気モーメントの秩序はもともとは電子のスピンに関係する交換相互作用からくるものであり、秩序の研究は物質の磁性の研究の一つの中心的課題である。それで、磁性体という用語は、狭義には、磁気的秩序をもつ物質という意味にも使われる。

[宮原将平]


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百科事典マイペディア 「磁性体」の意味・わかりやすい解説

磁性体【じせいたい】

磁場内で磁化する物質。すべての物質は多少とも磁性体で,その性質(磁性)は外部磁場に対する磁化の向きや強さにより,常磁性反磁性,強磁性(強磁性体),反強磁性フェリ磁性などに分けられる。これらは原子内電子の軌道運動による磁気モーメント,およびスピンに伴う電子・核子の固有の磁気モーメントによって生ずる。→磁化磁区
→関連項目残留磁化磁気磁気増幅器磁性材料特殊陶磁器

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「磁性体」の意味・わかりやすい解説

磁性体
じせいたい
magnetic substance

磁場の中に入れたときになんらかの磁気的性質を示す物質。すべての物質は強い磁場中では磁気モーメントを示すので,厳密にはすべての物質は一種の磁性体である。ただ,その磁場に対する磁化の向きや強さが物質により異なるので何種類かに分類される。反磁性体は磁場を加えると磁場と逆向きに磁化される物質で,磁性が弱い (→反磁性 ) 。強磁性体は磁石に吸いつくような強い磁性を示す磁性体であり,原子のもつ磁気モーメントが整列している。反強磁性体は隣合った2種の磁性原子の磁気モーメントの大きさが同じで,逆向きの磁性体である。フェリ磁性体は2種の磁気モーメントの大きさが異なるもので,性質は強磁性体に近い (→フェリ磁性 ) 。常磁性体は熱振動のために磁気モーメントが無秩序な向きをとり,弱い磁性を示す物質である (→常磁性 ) 。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「磁性体」の解説

磁性体

帯磁する物質。フロッピーディスクや音楽のテープでは、表面に塗られている磁性体に磁気でデータを記録する。

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