日本大百科全書(ニッポニカ) 「疫病(植物の病気)」の意味・わかりやすい解説
疫病(植物の病気)
えきびょう
植物の病気で、鞭毛(べんもう)菌類(カビの一種)に属するフィトフトラPhytophthora属の菌の寄生によって、葉、茎、果実が急速に褐色になって軟化腐敗する。日本では同属に約20種が知られており、代表的なものとしてインフェスタンスP. infestansによるジャガイモ、トマトの疫病、ニコチアナエP. nicotianaeおよびカプシキP. capsiciによるタバコ、ウリ類、トウガラシの疫病、カクトルムP. cactorumによるナシ、リンゴ、ビワなどの疫病などがある。ジャガイモ疫病は日本だけでなく世界各地でもっとも重要な病気にあげられている。とくにヨーロッパでは1842年以来数年にわたり大発生して大きな被害を与え、食糧飢饉(ききん)をおこした記録がある。
雨の多いときに発生が多く、いったん発生すると急速に広がる。柑橘(かんきつ)類やリンゴの疫病は地際(じぎわ)部の幹が侵され、やがて木全体が枯れる。伝染は、病気にかかった部分(病斑(びょうはん))につくられるレモン状の特徴のある形をした大きさ約50マイクロメートルの分生胞子(遊走子嚢(ゆうそうしのう))が発芽して遊走子を放出して行われる。
防除は、抵抗性品種(病気に強い品種)を栽培し、畑の排水をよくするほか、TPN剤(「ダコニール」)、マンゼブ剤(「ジマンダイセン」)、メタラキシル剤(「リドミル」)などの薬剤を散布して防ぐ。
[梶原敏宏]