甲斐の黒駒(読み)かいのくろこま

精選版 日本国語大辞典 「甲斐の黒駒」の意味・読み・例文・類語

かい【甲斐】 の 黒駒(くろこま)

甲斐国山梨県)から産出した、黒毛良馬上代、甲斐国には、柏前(かしざき)、真衣野(まきの)穂坂(ほさか)三つ御牧があり、宮廷用の良馬を産したという。特に聖徳太子愛馬もこの馬であるとされ、太子がこの馬で富士山に登ったという伝説があり、画題とされる。
書紀(720)雄略一三年九月・歌謡「ぬば玉の 柯彼能矩盧古磨(カヒノクロコマ) 鞍着せば 命死なまし 柯彼能倶盧古磨(カヒノクロコマ)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の甲斐の黒駒の言及

【甲斐国】より


【古代】
 古墳時代の甲斐は,前期には曾根丘陵地帯に銚子塚古墳(中道町)などいくつかの前方後円墳が出現し,後期には分布地域が広がり,姥塚(うばづか)(御坂町),加牟那塚(甲府市)など巨大な横穴式石室を持つ円墳も現れた。これら古墳の築造者で,この地の支配者であった甲斐国造(くにのみやつこ)が,大和の政権に貢上した馬は,“甲斐の黒駒”と呼ばれて名高く,その伝統は平安時代に駒牽(こまびき)の行事となった。大化改新後,新しい国郡制に基づき甲斐国が建てられ,山梨,八代,巨麻(巨摩),都留の4郡が置かれた。…

【聖徳太子】より

…その典型は,1320年(元応2)ころに四天王寺で製作された《正法輪蔵》で,それは中世に醸成された太子をめぐる豊かな秘事口伝を含む。たとえば太子の乗る黒(烏)駒は,《補闕記》に烏斑の駒に乗り富士や北国に遊行したことを記すが,《伝暦》以降,これを甲斐の黒駒として,最愛の妃膳(かしわで)大娘をめとる事跡とともに27歳の条に記される。《正法輪蔵》ではこれを輪王の七宝中の馬宝と女宝であると解釈し,黒駒に乗る太子は,諸国の霊山を巡行して熊野や伊勢などの神々の本地垂迹(ほんじすいじやく)の相を明らかにし問答して結縁する。…

※「甲斐の黒駒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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