狛氏(読み)こまうじ

改訂新版 世界大百科事典 「狛氏」の意味・わかりやすい解説

狛氏 (こまうじ)

旧三方楽人の一つで奈良南都方主流。興福寺に属した宿禰(すくね)姓の雅楽家。祖先高句麗からの渡来人。《楽所系図》によれば大唐,高麗新羅,百済などの舞楽師であり,大宰府庁舞師であった狛好行が祖。その後葛古,衆古を経て,冷泉天皇のとき衆行が勅によってはじめて興福寺雑掌となった。その4代の孫光高(959-1048)は左舞(さまい)の名人として家名をあげ,第1代の楽所の左方舞人をつとめ,その後の狛氏の発展の基礎を築いた。子孫に野田(上(うえ)),西,辻子(辻),芝,奥,東,窪(くぼ),久保の諸家があり,左舞を主業とし,笛・笙(しよう),篳篥(ひちりき)を家業とし,朝廷の楽事に参加して繁栄した一族である。また,光高の曾孫の光則の後裔は,宇治槙長者であったらしい。輩出した著名人に左舞譜《掌中要録秘曲》の著者狛光真(1166-1240),《教訓抄》の狛近真,狛朝葛(ともかず)などがいる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「狛氏」の意味・わかりやすい解説

狛氏
こまうじ

古代渡来人系の高麗氏,巨万氏とも書く。高麗(高句麗)から渡来。工匠として染革などに長じていた。主流は天武朝に改姓(→)。狛部は令制下,伴部として大蔵省に編入(→律令制)。

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世界大百科事典(旧版)内の狛氏の言及

【南都方】より

…雅楽用語。雅楽演奏専門家(楽人,伶人,楽師などと称す)の出身系統を示す名称。奈良方ともいい,奈良興福寺所属の楽人を指す。狛(こま)姓を名乗る,上(うえ),西(にし),辻(つじ),芝(しば),奥(おく),東(ひがし),窪(くぼ),久保(くぼ)の8家で構成される(15世紀以前はすべて狛姓を名乗った)。平安時代末期から宮廷での舞楽に左方舞人として出仕するなど宮廷所属楽人(京都方)との接触があった。16世紀末からは天王寺方とともに宮廷の三方楽所(さんぽうがくそ)の一翼を担うにいたった。…

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