漬・沾(読み)ひず

精選版 日本国語大辞典 「漬・沾」の意味・読み・例文・類語

ひ・ず ひづ【漬・沾】

(古くは「ひつ」)
[1] 〘自ダ四〙 水につかる。ひたる。ぬれる。
万葉(8C後)四・六一四「相思はぬ人をやもとな白たへの袖(そで)(ひつ)までに哭(ね)のみし泣かも」
[2] 〘自ダ上二〙 水につかる。ひたる。ぬれる。
蜻蛉(974頃)中「袖ひつる時をだにこそなげきしかみさへしぐれのふりもゆくかな」
※読本・雨月物語(1776)浅茅が宿「朝露うちこぼるるに、袖湿(ヒヂ)てしぼるばかりなり」
[3] 〘他ダ下二〙 水につける。ひたす。ぬらす。
※土左(935頃)承平五年二月四日「手をひてて寒さもしらぬいづみにぞくむとはなしにひごろへにける」
[語誌]上代から中古にかけて和歌に多く用いられた語で、平安期には、すでに歌語としての性格を備えていたと思われる。鎌倉期に入ると、「古来風体抄‐下」に「ひぢてといふ詞や、今の世となりては少し古りにて侍らん」とあるように、古風な言葉と認識されるようになり、実際の詠作にはあまり用いられなくなっていったようである。

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