溜め漉き(読み)タメズキ

デジタル大辞泉 「溜め漉き」の意味・読み・例文・類語

ため‐ずき【×溜め×漉き】

紙の手漉き法の一。をはめた漉桁すきげたへ紙料液をすくい入れ、揺り動かして繊維の絡みをよくし、水を漏下させて紙の層を得るもの。→流し漉き

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「溜め漉き」の意味・わかりやすい解説

溜め漉き
ためずき

和紙の基本的な手漉き法の一つ。流し漉きに対する。その工程は、まず紙料調製の諸工程を終えた繊維を漉槽(すきぶね)に入れて水とよくかき混ぜ、この液の中へ簀(す)をはめ込んだ漉桁(すきげた)を入れ、さらに桁の手元のほうを下げて液をすくい上げる。そして簀の上の紙料液を水平にして前後左右に揺り動かすことにより、繊維をよく絡み合わせる。紙の厚さはこの紙料液の濃度と、汲(く)み込みの深い浅いによって決まる。簀を通しての水漏れが終わったら、桁枠(けたわく)を外し、繊維の薄く付着した簀を斜めにしてさらに余分の水を絞り落とす。簀を傍らの平たい板(紙床(しと))の上に伏せて湿紙(しっし)だけを残し、外した簀はふたたび桁にはめて次の抄紙(しょうし)に備え、湿紙の上にはそれと同じ大きさの紗(しゃ)をかぶせる。この操作を繰り返し、紙床の上に積み重ねられた湿紙がある程度の高さに達したら、その上に板と重石(おもし)をかけて水切りをする。一晩放置したのち紗から一枚ずつ湿紙をはがし、干し板に刷毛(はけ)で張り付けて天日で風乾(かざぼ)しする。この方法は、古代中国で紙が創製されたころからのもので、世界中伝播(でんぱ)されており、今日でも各国手漉き紙がこの方法によって漉かれている。なお機械製紙もまったくこの原理に従っている。

[町田誠之]

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