日本大百科全書(ニッポニカ) 「渤海(海域)」の意味・わかりやすい解説
渤海(海域)
ぼっかい / ポーハイ
中国北東部にある海域。北、西、南は遼寧(りょうねい/リヤオニン)、河北、山東の3省と天津(てんしん/ティエンチン)市に囲まれ、東は遼東(りょうとう/リヤオトン)半島と山東半島の間の渤海海峡で黄海に接続している。黄海との境は遼東半島南端の老鉄山角(ろうてつさんかく)から廟島(びょうとう)群島を経て山東半島北端の蓬莱角(ほうらいかく)を結ぶ線とされる。面積約9万7000平方キロメートル、平均水深は26メートルで、もっとも深い所でも水深75メートルの浅海である。沿岸には遼東湾、渤海湾、莱州湾などの内湾がある。黄河、海河、遼河などから大量の淡水が流入して海水と混合し、塩分濃度は平均約30、黄河河口では26にすぎない。そのため栄養分が豊富で、海底が平坦(へいたん)なこともあって底引網の好漁場である。遼東湾などの内湾部は冬季には広く結氷する。主要な水産物としてはキグチ、フウセイ、タチウオ、ヒラ、タイショウエビ、イシモチ、カニなどがあるが、漁獲量は減少。遼東半島や天津付近の海浜では製塩も盛んで、ことに天津付近に産する長瀘塩(ちょうろえん)の名で知られる。海底は地質学的には大規模な沈降性の盆地構造をなし、厚い堆積(たいせき)層に覆われている。この中に埋蔵されている石油や天然ガスの開発も進められ、すでに日中合弁の埕北(ていほく)油田など多くの油田、ガス田が開発されている。渤海をとりまく陸地部分の北京(ペキン)、天津の2市と遼寧、河北、山東の3省は、環渤海地域とよばれ、中国の七大経済地域の一つとして工業開発の重要施策対象にされている。
[河野通博]