清算取引(読み)せいさんとりひき

精選版 日本国語大辞典 「清算取引」の意味・読み・例文・類語

せいさん‐とりひき【清算取引】

〘名〙 取引所の売買方法の一つ。ある期限までに転売、買戻しを行なってその差金だけを決済することができる取引。現在、商品取引所における先物取引だけに認められ、証券取引所では禁じられている。〔投機市場論(1926)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「清算取引」の意味・読み・例文・類語

せいさん‐とりひき【清算取引】

決済期日に実物代金の受け渡しをすることによって決済することもできるが、それまでに反対売買を行い、その差金の授受によって決済することができる取引。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「清算取引」の意味・わかりやすい解説

清算取引 (せいさんとりひき)

取引所における売買取引の一種で,有価証券の清算取引と商品の清算取引とがある。実物取引信用取引に対しては現物取引というが,実態は同じ)に対するもので,現物の引渡しのほか転売・買戻しによる差金決済もできる取引である。清算取引は現在商品取引所において先物取引という名称で行われているが,証券取引所での取引は,1945年の取引所再開に際してGHQの指示で禁止された。

 有価証券の清算取引は長期清算取引短期清算取引とに分かれる。長期清算取引は限月(げんげつ)制がとられ,決済日が定められた取引を一定期間行うことから定期取引とも呼ばれる。取引手法としての歴史は古く,1878年に株式取引所条例で認められた。当初債券(ほとんどが国債)について行われ,その後株式にも拡大された。商品取引と同様に,当限(とうぎり),中限(なかぎり),先限(さきぎり)の3ヵ月3限制(一時2ヵ月3限制)がとられ,取引の決済は現物提供,転売(買い付けた証券を期限内に売却)や買戻し(売り付けた証券を期限内に買い戻す)による差金決済も可能であった。

 短期清算取引は1922年の取引所法(1893公布)改正さい創設され,43年の取引所法改正により廃止された。株式についてのみ認められた取引の方法で,1週間をもって決済期限とするが,1ヵ月を限度として受渡しを繰り延べることができる取引である。形式的には長期清算取引と同じであるが,実質的には代行会社による融資・貸株を必要とした。創設のねらいは長期清算取引の実物取引化にあったといわれるが,実態はより投機的であった。かつての株式の清算取引と現行の信用取引との相違点は,前者が差金決済を可能とする取引であるのに対し,後者は取引所取引そのものは現物取引であり,証券会社が顧客に信用を供与(融資・貸株)することによってはじめて,顧客は差金決済が可能となる取引である点にある。なお〈貸借取引〉の項を参照されたい。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「清算取引」の意味・わかりやすい解説

清算取引
せいさんとりひき
clearing contract
future transaction

取引所における売買方法の一種。実物取引(現物と代金を受渡しする取引)に対照される。一定期限に現物の受渡しもするが、またその期限までに転売や買戻しをすることによって売値と買値の差額だけを決済することもできる取引方法をいう。清算取引は、相場の動きを利用して差益を得たり、保険つなぎ(ヘッジ)の目的で行われる。

 決済期限については、売買契約時に定めた月の月末に決済する限月(げんげつ)制(6か月以内がもっとも多い)がとられる。3か月制の場合、契約した月に決済するものを当限(とうぎり)、翌月末決済のものを中限(なかぎり)、翌々月末決済のものを先限(さきぎり)という。一般に相場を表示する場合には、○月限(きり)××円という。取引の種類としては、銘柄取引と標準物取引とがあるが、前者はまれで、後者が主である。標準物取引によれば、契約は標準品の値段で行うが、受渡しのときに同一品種であれば等級や銘柄の異なるもので代用してもよく、あらかじめ定めてある格づけにしたがって、標準品との差額(差金)を授受して決済することができる。

 清算取引は、商品の清算取引と有価証券の清算取引に大別される。商品の清算取引は、商品取引所において行われているが、法律上は先物(さきもの)取引とよばれている。証券取引所では、株式先物と債券先物が清算取引に該当する。

[森本三男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「清算取引」の意味・わかりやすい解説

清算取引【せいさんとりひき】

実物取引に対する取引所の売買方法で,期限内に現物受渡しのほか転売,買戻しによって差金決済もできる取引。商品の清算取引と有価証券の清算取引があり,商品取引所では先物(さきもの)取引の形での清算取引だけを認めるが,証券取引所では戦前に長期と短期の清算取引が行われ,戦後は証券取引所再開三原則で禁止。
→関連項目現物取引定期取引

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の清算取引の言及

【商品市場】より

…標準品先物取引では,決められた決済の時点で商品と代金を受け渡す形での決済のほか,差金のやりとりでもいいことになっている。標準品先物取引は,決済期日が決まっているところから定期取引,また差金決済が可能なところから清算取引ともいう。 商品は品質が比較的安定したものばかりではない。…

【信用取引】より

…具体的には,顧客が株式の売買を行う際に,証券会社が売付株券または買付代金を貸与し,これによって現株または資金の全額をもたない者にも売買を可能にした取引である。信用取引の決済は,反対売買(信用買いの場合は転売,信用売りの場合は買戻しという)を行い差金の授受で済ますのが通例で,その意味では,第2次大戦前行われていた清算取引とも似ているが,証券会社間の売買はあくまで普通取引(4日目受渡し)の形をとっている点において,清算取引と異なっている。すなわち証券会社は売買成立の日から4日目の決済日に買付代金の貸付け(買付株券は担保にとる),または売付株券の貸付け(売付代金を担保にとる)を行って,それぞれ決済するものである。…

※「清算取引」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android