浙江(省)(読み)せっこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「浙江(省)」の意味・わかりやすい解説

浙江(省)
せっこう / チョーチヤン

中国の東部沿海にある省。略称は浙。省名は、省内を流れる銭塘江(せんとうこう)の旧称、浙江による。面積約10万1800平方キロメートル、人口5539万(2015)。省都は杭州(こうしゅう)。ほかに寧波(ニンポー)、温州(おんしゅう)、嘉興(かこう)、湖州(こしゅう)、紹興(しょうこう)などの11地級市、20県級市、33県、1自治県、36市轄区がある(2015年時点)。

[林 和生 2016年12月12日]

自然

地形

地形は山地と丘陵が多く、省の約70%を占める。平原は北部と沿海に分布し、杭州湾以北の杭嘉湖(こうかこ)平原と以南の寧紹(ねいしょう)平原からなる浙北(せつほく)平原がもっとも広い。標高20メートル以下のこの平原は縦横に水路網が走る水郷地帯で、土壌が肥沃なため、全国でも有数の穀倉地帯である。また省内の河川の中・下流には標高50~250メートルの比較的広い河谷盆地が発達している。たとえば銭塘江の金衢(きんく)盆地と曹娥江(そうがこう)の新嵊(しんじょう)盆地などは重要な商品作物産地となっている。西部と南部は山地や丘陵で、山地の多くは北東から南西に走る。省西部の天目山、千里崗(せんりこう)、省東部の天台山、会稽(かいけい)山、四明(しめい)山などの山地は、天目山が1500メートル級の峰をもつほかはおおむね標高1000メートル以下で、小盆地が多く発達している。省南部の仙霞嶺(せんかれい)、括蒼(かつそう)山、洞宮(どうきゅう)山、雁蕩(がんとう)山などの山地は標高1000メートル以上で、連峰が相接し渓谷は深く刻まれる。なかでも南雁蕩山、北雁蕩山は浙江省南部の名勝である。

 杭州湾岸は良港に乏しいが、南部は岩石海岸で、曲折の激しい典型的なリアス海岸が福建(ふっけん)省まで続き、象山港、三門湾、台州湾、温州湾など天然の良港が多い。また沖合いには大小1800以上の島嶼(とうしょ)があり、舟山(しゅうざん)群島がその代表である。河川は銭塘江、甬江(ようこう)、甌江(おうこう)などが山嶺(さんれい)に切り込み、峡谷や急流を形成して、包蔵水力に富む。

[林 和生 2016年12月12日]

気候

気候は温暖湿潤で四季の別が明らかである。年平均気温は15.4~18.1℃で、無霜期間が年間230~275日ある。1月の平均気温は2.5~7.5℃で、等温線は緯線とほぼ平行し、7月は26.5~29.5℃で、等温線は経線と平行に近くなる。年降水量は1100~1900ミリメートルで、南東の沿海地域や南西の山地で比較的多く、北部は比較的少ない。梅雨と台風の時期にはまとまった雨が降る。解放前は水利事業が遅れ、水害、干害が多かったが、解放後、新安江ダムをはじめとするダムの建設や、灌漑(かんがい)、排水施設の整備が進められた。

[林 和生 2016年12月12日]

歴史

春秋時代の越国の地にあたり、戦国時代は楚(そ)に、漢代は揚州(ようしゅう)に属した。唐代は江南東道に、五代は呉越(ごえつ)に、宋(そう)代は両浙路(りょうせつろ)に属した。明(みん)代に浙江布政使司が置かれ、清(しん)代に入って浙江省となった。

[林 和生 2016年12月12日]

 清代後期には、1842年にイギリスと結んだ南京(ナンキン)条約により、寧波が開港場の一つとなった。さらに、日清戦争後の1895年に締結された下関条約で、杭州の開港が決定。杭州市郊外の拱宸橋(きょうしんきょう)には日本領事館が設置され、日本租界も設けられた。これらの開市・開港により、浙江省の資本主義は初期の発展を遂げ、1890年代初頭には製糸・紡績業のほか、機械製造業、鉱業が勃興した。他方で、開港は西洋の近代思想に触れるきっかけとなった。浙江省は清朝打倒の反封建運動を積極的に行った地域の一つとなり、孫文(そんぶん)の革命運動には浙江財閥から多額の援助が行われた。また、浙江省出身の蒋介石(しょうかいせき)は国民政府において、党、軍、政府の要職に多くの浙江人を起用している。

 中華人民共和国成立後は、社会主義計画経済の導入や三反五反運動、文化大革命などにより、浙江省の資本主義は完全に停止された。しかし、改革開放政策の開始後は、民営企業を中心にふたたび経済活動が活発化し、目覚ましい経済成長を遂げている。

[于 海春 2016年12月12日]

経済・産業

2015年の域内総生産(GDP)は4兆2886億元(約82兆円=同年平均為替(かわせ)レートで換算、以下同。成長率8.0%)で、国内31の省・直轄市・自治区のなかでは4位の経済規模を誇る。GDPの産業構成比は第一次産業が4.3%、第二次産業が45.9%、第三次産業が49.8%で、とりわけIT関連産業とサービス業を中心とする第三次産業は、2014年に構成比で第二次産業を上回り、経済成長の牽引(けんいん)役となっている。

 改革開放前、浙江省の経済は農業が中心であったものの、耕地面積が少なく(1978年の耕地面積は183万8000ヘクタール)、1人当りの耕地面積はわずか4.9アールであったため、富裕な省ではなかった(1978年のGDPは123億7200万元で、国内12位)。1978年、寧波港の対外開放を嚆矢(こうし)として浙江省の改革開放が始まると、農村では「家庭請負生産責任制」が導入されて農業生産の効率が高まった。都市部では省政府が主導した起業の奨励などによって民営企業の成長が促進され、農村から移住した「農民工」とよばれる大量の労働力が製造業や販売業に従事し、省の発展を支えた。その結果、杭州、温州、紹興、寧波を中心に著しい経済成長を遂げ、浙江省は中国でもっとも富裕な省の一つとなった。省都の杭州には2013年時点で売上高10億元(約159億円)を超える300以上の大手企業が拠点を構え、温州には中・小民営企業が集中する。また、紡績業が発展した紹興には世界最大規模の繊維製品集積センターが設立され、寧波は国際物流拠点として存在感を高めている。

 2016年『フォーチュン』誌(アメリカの経済誌)のグローバル500社のランキングでは、浙江省の企業として、359位に物流・貿易会社である国有企業の物産中大集団(本社杭州市、売上高291億ドル)が、410位にボルボ・カーズ社(スウェーデン)を2010年に買収した民間自動車メーカーの浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ。本社杭州市、売上高263億ドル)が名を連ねている。上記以外で知名度が高いのは電子商取引の阿里巴巴集団アリババ。本社杭州市)で、その他、アパレルの雅戈爾集団(ヤンガー。本社寧波市)、自動車部品メーカーの万向集団(本社杭州市)、飲料メーカーの娃哈哈集団(ワハハ。本社杭州市)などが浙江省に本社を構えている。

[于 海春 2016年12月12日]

農業

耕地面積は197万6600ヘクタールで、国内23位(2014)。2009年時点の1人当り耕地面積は3.7アールで、全国平均(10.1アール)の約3分の1にすぎない。

 食糧生産量は1980年代には年平均1589万トンあり、1990年代も年平均1489万トンであったが、2000年代初頭から大幅に減少し始め、2002年には初めて1000万トンを下回った。2006年以降の生産量は700万トン台である。

 茶、ミカン、モウソウチクなどの商品作物栽培が盛んで、養蚕業も行われている。2015年の茶生産量は17万1000トンで、このうち15万7700トンが輸出され、全国の茶輸出量の48.5%を占める。主要な輸出先は1位がモロッコ(30%)、2位がウズベキスタン(7%)で、日本は7位(2%)。輸出される茶の大部分は緑茶である。温州はミカンの名産地として古くから知られており、日本原産の温州ミカンの名の由来にもなっている。2011年のミカン生産量は208万トンで、国内7位であった。モウソウチクは省北部に位置する湖州市安吉(あんきつ)県の名産で、2011年の生産量は国内2位の1億7198万本である。養蚕は2000年代なかばまで広西(こうせい)チワン族自治区に次ぐ国内2位であったが、2000年代後半から減少傾向にあり、2010年には5位に順位を下げた。

[于 海春 2016年12月12日]

水産業

国内最大規模の天然漁港である舟山群島の沈家門(しんかもん)漁港や寧波市の石浦(せきほ)漁港を有し、伝統的に水産業が発達した地域である。漁業、養殖業、加工、流通、貿易までを一貫して手がける垂直統合の動きが進んでいる。2014年の水産物生産量は575万0600トンであった。そのうち海面漁業の生産量が378万4200トンで、全国の海面漁業生産量の約3割を占める。

[于 海春 2016年12月12日]

資源

石炭、天然ガスなどのエネルギー資源や金属資源に乏しい一方で、非金属鉱物資源の埋蔵量が多いところに特徴がある。2014年末までに埋蔵量が確認された資源が83種類あり、そのなかで葉ろう石、明礬石(みょうばんせき)、大理石は埋蔵量国内1位を誇る。このほか蛍石(ほたるいし)、イライト、藻土、粗粒玄武岩、凝灰岩は埋蔵量国内2位で、さらに沸石、ホウ砂(しゃ)、カオリナイト、珪灰石(けいかいせき)など計25種類の資源は埋蔵量が国内10位以内である(2014)。

[于 海春 2016年12月12日]

工業

改革開放前、浙江省の工業生産額は46億9700万元(1978)で、全国(1607億元)のわずか2.9%を占めるにすぎなかった。しかし改革開放後は、長江デルタに経済貿易港を有するという地理上の利点に加え、安価な労働力が豊富であったことから、繊維工業や機械工業などの労働集約型産業を中心に、工業が急速に発展した。工業増加値(中国が工業統計において重視する指標で、工業製品の付加価値を表す)でみると、その総計は1979年の55億6000万元から1991年には438億4000万元となり、中国政府が設定した可比価格(比較の基準とする価格)で計算するとおよそ6.3倍に増加している。また工業生産額は1991年に1801億元となり、年平均増加率は国内1位の20.1%に達した。この時期、耐久消費財の生産を担った郷鎮(ごうちん)企業などの民営企業が著しく発展し、1984年には民営企業の工業増加値が初めて国有企業のそれを上回った。

 1992~2001年は、工業化が全面的に進展した時期である。改革開放の加速を背景として、外国から多額の直接投資を受け入れ、企業規模の拡大と生産技術の改良、革新を進めた。

 2001年、省内の「規模以上企業」(国有企業および売上高500万元以上の民営企業)の工業増加値は1781億元に達した。そのうち、紡績、アパレル、皮革、機械工業の工業増加値は全体の51.6%を占めた。また、2000年に集計された国家統計局のデータによると、主要工業製品全532種類のなかで、浙江省での生産量が国内1位であった品目は56種類、2位の品目は53種類あった。なかでも、通信ケーブル、テレビアンテナ、粉末冶金製品、液圧機器、フード付き換気扇、織物、減速機、眼鏡(めがね)、薄物革、染織品は全国シェア50%以上を誇る。

 こうして浙江省は中国を代表する工業地域の一つとなったが、2004年以降は成長率が相対的に鈍化傾向にある。1990年代から2003年まで、「規模以上企業」の工業増加値の前年比増加率は国内5位以内を維持していたが、2004年に21位に急落。同年の工業増加値は前年比21.1%増の4173億4000万元で、かならずしも低い値ではなかったが、経済が全国規模で急成長するなかで、他地域よりは見劣りする結果となった。背景として、全国平均よりも急速に進んだ人件費の高騰など、先進地域ゆえの要因があったとみられる。

 2008年のリーマン・ショック以降は、世界的な需要低迷が輸出を下押ししたほか、原料価格の高騰などの影響もあって、「規模以上企業」の工業増加値の増加率は2007年の17.9%から、2008年には10.1%に急落した。2010年以降は、化学繊維製品や集積回路の生産量が伸びた一方、パソコンおよびその関連設備の減産が続き、2015年の「規模以上企業」の工業増加値は1兆3193億元(約25兆円)で、増加率はわずか4.4%であった。こうした状況のなか浙江省政府は、自動車関連産業に重点を置いた政策を展開。2005年に「浙江省自動車産業および部品産業企画」を制定、2010年までに低燃費自動車とハイグレードバス、ミドルグレードバスの生産基地および自動車部品の製造センターを杭州の蕭山(しょうざん)、台州(だいしゅう)の金華(きんか)、温州の瑞安(ずいあん)、寧波の杭州湾新区などに建設した。2016年には「浙江省新エネルギー自動車産業13次5か年計画」を発表し、新エネルギー車(電気自動車およびプラグイン・ハイブリッド・カー)の製造を今後の産業発展の重点とした。ちなみに、2015年の浙江省での新エネルギー車生産台数は7万台を上回り、全国生産量の約2割を占める。

[于 海春 2016年12月12日]

サービス業

浙江省は電子商取引大手であるアリババの創業地でもあり、2000年代からITサービス業が発展、省内でもっとも成長率の高い産業の一つとなった。浙江省内に拠点を置くIT関連会社の2015年の売上高の合計は、前年比35.7%増の3223億元(約6兆円)であった。また電子商取引の盛況により、運輸業も大きく発展しており、2015年の売上高は前年比50.5%増の811億元(約1兆6000億円)であった。

[于 海春 2016年12月12日]

観光業

世界文化遺産(後述)の西湖(せいこ)(杭州市)など、有名な観光地を擁する浙江省は、観光業も主要産業の一つである。2015年の観光業売上高は前年比13%増の7139億元(約13兆7000億円)で、そのうち国内観光客の旅行消費額は前年比13%増の6720億元(約12兆9000億円)、観光客数は前年比9.7%増の5億2500万人であった。一方、2015年のインバウンド消費は前年比13.7%増の67億9000万ドル、外国人観光客数は前年比8.8%増の延べ1012万人であった。

[于 海春 2016年12月12日]

賃金水準

都市部に住む非私営企業従業員の平均賃金(年収)は、2000年時点で全国平均の139.5%にあたる1万3076元であった。2005年には同141.0%の2万5896元まで増えたが、その後は他地域の賃金上昇に追いつかれつつあり、2010年には同111.2%の4万0640元、2014年には同109.2%の6万1572元(約105万8000円)となった。それでも、全国的にみれば北京(ペキン)、上海(シャンハイ)、天津(てんしん)に次ぐ国内4位であり、賃金水準は依然として高い。

 2015年の1人当り可処分所得は3万5537元(約68万3000円)で、前年比で8.8%増加した。都市・農村別にみると、都市部は4万3714元(約84万円、前年比8.2%増)、農村部は2万1125元(約40万6000円、同9%増)である。農村部の可処分所得は1990年代後半には国内3位以内に入っており、農村部としては全国的に高い水準であったが、都市部との格差は大きかった。近年は2005年の2.45倍をピークに、2010年2.42倍、2015年2.06倍と、若干の格差解消がみられる。

[于 海春 2016年12月12日]

対内直接投資

2014年の海外(香港(ホンコン)を含む)からの直接投資額は157億9725万ドルで、製造業(36.1%)と不動産業(29.5%)に集中している。国・地域別でみると、1位が香港で全体の71.5%を占める。以下、2位がイギリス領バージン諸島(5.4%)、3位がシンガポール(2.9%)、4位がドイツ(2.2%)で、日本からの直接投資額は2億8625万ドル(1.8%)で5位であった。なお、イギリス領バージン諸島からの直接投資には台湾系企業による投資が多く含まれる。

[于 海春 2016年12月12日]

不動産

改革開放後の高度経済成長に伴い、不動産開発投資は大幅に増加したが、中央政府の政策に翻弄され、その増加率は乱高下してきた。2002~2004年は年30%以上の増加率で成長したが、バブルを警戒した中央政府が2005年に不動産投資抑制策を打ち出したため、同年の増加率は7.6%にまで鈍化した。しかし、リーマン・ショック後の景気対策(4兆元規模)で生じた余剰資金が不動産投機に向かい、2011年の増加率は47.9%に急上昇した。2012年には中央政府がふたたび投機抑制に舵(かじ)を切り、不動産価格も大幅に下落した。2015年の不動産開発投資額は7112億元(約14兆円)で、前年より2.1%減少した。

 2016年、中央政府は預金準備率の引下げ、戸籍制度改革により農民の都市住民化を奨励し、省政府は不動産用途制限を解除するなど、不動産在庫を消化するための施策を進めており、杭州、温州、嘉興をはじめとする都市部の不動産価格はふたたび大幅に上昇している。

[于 海春 2016年12月12日]

交通

2010年ごろから高速鉄道の開通が相次ぎ、2013年に開通した滬杭(ここう)高速鉄道(上海―杭州)、寧杭高速鉄道(南京―杭州)、杭甬高速鉄道(杭州―寧波)、2014年開通の杭長旅客専用線(杭州―長沙(ちょうさ))などがある。また、杭黄高速鉄道(杭州―黄山(こうざん))、商杭高速鉄道(商丘(しょうきゅう)―杭州)がそれぞれ2018年、2020年に開通予定である。その他、重要な鉄道路線としては、滬杭線、杭甬線(杭州―寧波)、甬台温線(寧波―台州―温州)などがあげられる。高速鉄道利用で、杭州から北京まで約5時間、上海まで約1時間である。

 2014年時点で開通している道路の総延長は11万6367キロメートルで、このうち高速道路は3884キロメートルである。高速道路利用で、寧波から上海まで約2時間かかる。また、自動車による長江デルタ地域内の移動は、ほとんどが3時間以内に抑えることができる。

 水上交通では、東シナ海に面する寧波港、舟山港、温州港、台州港、海門(かいもん)港、乍浦(さくほ)港を擁するほか、主要な内陸港として、杭州港、嘉興港、紹興港、湖州港などがある。

 空路は、省内最大の杭州蕭山(しょうざん)国際空港を中心に、寧波檪社(れきしゃ)国際空港、温州龍湾(りゅうわん)国際空港、義烏(ぎう)空港など計12の空港がある。

[于 海春 2016年12月12日]

教育・文化

教育

杭州にある浙江大学は、中国でもっとも早く設立された大学の一つで、1897年創立の求是書院を前身とする。中央政府により「国家重点大学」に指定されている。2016年『タイムズ・ハイアー・エデュケーション』誌の「アジア大学ランキング」では25位(国内では5位)に名を連ねた。

[于 海春 2016年12月12日]

世界遺産の登録

浙江省には3件の世界遺産がある。一つ目は2010年に登録された「中国丹霞(たんか)」(自然遺産)である。丹霞とは、赤い堆積層の隆起と風化によって形成された、断崖や峡谷、石柱などの景観で、貴州(きしゅう)省や広東(カントン)省など中国南部に広く分布する。「中国丹霞」として世界遺産登録されたのは6か所あり、浙江省では江山(こうざん)市にある江郎山(こうろうさん)がその対象となった。次いで、2011年には西湖が「杭州西湖の文化的景観」として、2014年には隋(ずい)の文帝・煬帝(ようだい)が整備した大運河(北京―杭州)が「中国大運河」として、それぞれ世界遺産(文化遺産)に登録された。

[于 海春 2016年12月12日]

 4件目の世界遺産として、2019年に良渚(りょうしょ)古城遺跡が文化遺産に登録された。

[編集部 2023年4月20日]

日本との関係

外務省編『海外在留邦人数調査統計』によると、2014年(平成26)10月時点の在留邦人数は2891人で、杭州市(39.2%)、嘉興市(30.0%)、寧波市(16.2%)の3市に集中している。浙江省に進出している代表的な日系企業としては、東芝、日本電産(現、ニデック)などがあげられる。

 浙江省は歴史を通じて文化的水準が高く、日本とのかかわりが深かった。とりわけ寧波は古くから重要な国際港であり、遣唐使時代から日本と中国をつなぐ玄関口としての役割を果たした。寧波市にある阿育王寺や天童寺、台州市天台(てんだい)県にある天台山などは、日本の仏教文化の発展と深くかかわっている。

 浙江省と友好提携をしている日本の地方自治体は、静岡県(1982締結)、栃木県(1993)、福井県(1993)である。岐阜市は、1950年代から戦時中日本で死亡した中国人の遺骨発掘・送還運動などを通じて、杭州市との友好交流を始めた。1962年(昭和37)両市は平和と友好の碑文を交換。岐阜市長からの「日中不再戦」と刻まれた石碑が杭州市内の柳浪聞鴬(りゅうろうぶんおう)公園に、杭州市長からの「中日両国人民世世代代友好下去(中日両国民は子々孫々に至るまで仲良くしよう)」と刻まれた石碑が岐阜公園に立てられた。両市は1979年に友好提携を締結している。

[于 海春 2016年12月12日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例