永久告示録(読み)えいきゅうこくじろく(英語表記)Edictum perpetuum

改訂新版 世界大百科事典 「永久告示録」の意味・わかりやすい解説

永久告示録 (えいきゅうこくじろく)
Edictum perpetuum

ローマ時代の訴訟の規範集成。法務官は,自己の有するインペリウム(命令権)にもとづき,古くからのローマ市民法を援助補充,改廃するために必要に応じ告示を発し新たな法的保護を与えたが,毎年就任する法務官はその前任者のものを踏襲するという慣行から,共和政後期以来これらの告示がしだいに集積していった。ハドリアヌス帝は,130年ころその告示の編集を法学者P.S.ユリアヌスに命じて行わせ,元老院議決により確認させた。これを〈永久告示録〉といい,その成立によって,法務官による法形成が形式的にも終了するとともに,古典期法学者たちはとくにこれ以降告示に対する注解をその著作の重要な分野とみなした。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「永久告示録」の意味・わかりやすい解説

永久告示録
えいきゅうこくじろく
Edictum Perpetuum

ローマ皇帝ハドリアヌスの命により (132) サルビウス・ユリアヌス Salvius Julianusが編纂した市民担当・外国人担当法務官,高等按察官,属州長官の告示の集大成。共和制時代,市民法の生きた声として,新しい法を生み出す源泉であった告示も,元首制に入り元首の地位が確立し,政務官権限が縮小すると,告示の法創造力は枯渇し,告示の内容も固定化し,形式化していった。そこで,かつては具体的衡平の法であった名誉 (官) 法の価値,および効力を有権的に確定する必要に迫られた。告示の集大成により法学者の告示注解の研究が促進され,法律学隆盛の大きな要因となったものの,他方,政務官の司法権限は永久告示録の規定する訴訟方式に限定されることによって,政務官の訴訟を通じての法創造・法進化は終りを告げた。

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