水野年方(読み)みずのとしかた

百科事典マイペディア 「水野年方」の意味・わかりやすい解説

水野年方【みずのとしかた】

日本画家。江戸神田生れ。月岡芳年師事して歌川派錦絵を学んだのち陶画文人画を学ぶ。人物風景が多く日本美術協会,日本美術院,日本画会などに発表,風俗画地位を向上させた。門下鏑木清方池田輝方池田蕉園荒井寛方らの俊英が多い。代表作《岩清水図》《御殿女中》。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水野年方」の意味・わかりやすい解説

水野年方
みずのとしかた

[生]慶応2 (1866).1. 江戸
[没]1908.4.7. 東京
日本画家。通称は粂次郎。初め月岡芳年に歌川派の錦絵,山田柳塘に陶画,柴田芳州に南画を学び,のち三島蕉窓,渡辺省亭に師事して人物画,草木画,風景画を得意とした。1887年頃から『やまと新聞』に挿絵を描き,また日本美術協会日本美術院,日本画会に作品を発表するかたわら,評議員や審査員を務め,浮世絵以来の風俗画の地位向上に貢献した。門下に鏑木清方,荒井寛方など俊才が多い。主要作品『岩清水図』(東京国立博物館),『御殿女中』。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水野年方」の意味・わかりやすい解説

水野年方
みずのとしかた
(1866―1908)

日本画家。東京に生まれる。通称粂次郎(くめじろう)。浮世絵歌川(うたがわ)派の月岡(つきおか)(大蘇(たいそ))芳年(よしとし)に錦絵(にしきえ)、渡辺省亭(しょうてい)に花鳥画を学ぶ。明治期風俗版画の代表的作者で、かたわら『やまと新聞』『文章世界』などに口絵や挿絵を描き、福地桜痴(ふくちおうち)の『天竺徳兵衛(てんじくとくべえ)』、樋口一葉(ひぐちいちよう)『うもれ木』などの挿絵も手がけた。日本美術協会、青年絵画協会のほか、1898年(明治31)には日本画会評議員となり、同年の日本美術院創立には賛助会員として参加した。歴史画をよくし、代表作に『佐藤忠信参館図(ただのぶさんかんず)』『勾当内侍(こうとうのないし)』などがある。門下から鏑木清方(かぶらききよかた)、池田輝方(てるかた)、池田蕉園(しょうえん)ら風俗・美人画の名手が輩出した。

[二階堂充]


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朝日日本歴史人物事典 「水野年方」の解説

水野年方

没年:明治41.4.7(1908)
生年:慶応2.1.20(1866.3.6)
明治期の日本画家。江戸神田生まれ。通称粂次郎。14歳で月岡芳年に入門し浮世絵を学ぶが,その後一時陶器画を描く。20歳からあらためて芳年に師事。また柴田芳洲に南画,渡辺省亭に花鳥画を学び,有職故実も研究した。明治20(1887)年ごろから『やまと新聞』に挿絵を描き始め,尾形月耕と並ぶ人気挿絵作家となる。また日本画会,日本美術院の設立に参加,各種展覧会で活躍した。門下に鏑木清方,池田蕉園らの美人画家が輩出したが,彼自身は,浮世絵画派出身の,武者絵などの歴史人物画家として活動している。

(佐藤道信)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「水野年方」の解説

水野年方 みずの-としかた

1866-1908 明治時代の日本画家。
慶応2年1月20日生まれ。月岡芳年の門人。「やまと新聞」などの挿絵で活躍。美人風俗画のほか歴史画も得意とした。日本画会評議員,日本美術院賛助会員。門下に鏑木(かぶらき)清方,池田輝方ら。明治41年4月7日死去。43歳。江戸出身。通称は粂次郎。作品に「岩清水図」など。

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世界大百科事典(旧版)内の水野年方の言及

【歌川派】より

…このように,幕末の歌川派は,実力と人気において役者絵,美人画,武者絵,風景画と浮世絵界の代表的な分野を独占し,黄金時代を築いた。明治に入っても豊原国周(1835‐1900),月岡芳年がおり,芳年門下から水野年方(1866‐1908),鏑木(かぶらぎ)清方らが出るなど,その流れは現代まで続いている。【松木 寛】。…

【鏑木清方】より

…1831‐1901)。1891年,月岡芳年の高弟水野年方(1866‐1908)の門に入り,17歳ころから新聞挿絵を描いて知られ,尾崎紅葉,泉鏡花らに親しんだ。1901年大野静方,鰭崎英朋らと烏合会を結成し,浮世絵から本格的絵画への展開をはかり,09年《一葉女史の墓》を発表。…

※「水野年方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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