桜姫全伝曙草紙(読み)サクラヒメゼンデンアケボノゾウシ

デジタル大辞泉 「桜姫全伝曙草紙」の意味・読み・例文・類語

さくらひめぜんでんあけぼのぞうし〔さくらひめゼンデンあけぼのザウシ〕【桜姫全伝曙草紙】

読本。5巻。山東京伝作、歌川豊国画。文化2年(1805)刊。清玄桜姫伝説に、丹波国桑田の鷲尾家のお家騒動に絡む復讐ふくしゅう談を加えた伝奇小説

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精選版 日本国語大辞典 「桜姫全伝曙草紙」の意味・読み・例文・類語

さくらひめぜんでんあけぼのそうし さくらひめゼンデンあけぼのサウシ【桜姫全伝曙草紙】

読本。五巻。山東京伝作。歌川豊国画。文化二年(一八〇五)刊。丹波桑田の鷲尾家のお家騒動にからむ復讐談を骨子とし、清玄(せいげん)桜姫伝承を導入して因果談的趣向を重ねあわせた伝奇小説。のち、好評にこたえ、この筋をとって京伝自ら合巻「桜姫筆再咲(ふでのにどざき)」を出している。曙草紙

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改訂新版 世界大百科事典 「桜姫全伝曙草紙」の意味・わかりやすい解説

桜姫全伝曙草紙 (さくらひめぜんでんあけぼのそうし)

読本。山東京伝著。初代歌川豊国画。1805年(文化2)刊。歌舞伎などで流布していた清玄桜姫物の怪談を素材とし,悪と美とグロテスクと怪奇を織りなした,京伝の長編伝奇小説の代表作。丹波国鷲尾義治の正妻野分の方が,寵妾玉琴を惨殺したことに端を発し,玉琴の怨念がさまざまな形で野分の方にたたり,その娘桜姫にも,玉琴の死体から生まれ成長して清水寺僧となった清玄が恋慕し,愛欲の死霊となってまつわりつづけるという物語を主筋とし,これに発心する鈴虫・松虫姉妹,復讐する怪盗蝦蟇丸(がままる),忠臣弥陀二郎などがからむといった錯綜した複雑な趣向で,二人桜姫や屍姦譚をふくんだ妖美で怪奇な世界がつくられている。《勧善桜姫伝》(大江文坡著,1765)を直接の粉本とするが,他に近松門左衛門の《一心二河白道(いつしんにがびやくどう)》(1698)や,染殿后を襲った紺青鬼(こんせいき)伝説,市森長者の娘桜姫難産死の伝説などを構想上に生かし,江戸伝奇小説の基本的パターンを作った記念碑的な作品である。ライバルの曲亭馬琴もこの作を高く評価した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「桜姫全伝曙草紙」の意味・わかりやすい解説

桜姫全伝曙草紙
さくらひめぜんでんあけぼのぞうし

江戸時代後期の読本山東京伝作。歌川豊国画。5冊。文化2 (1805) 年刊。丹波の鷲尾義治の娘桜姫と伴宗雄との恋を中心に,復讐,怨霊などを配し,歌舞伎で有名な清玄,桜姫の説話に中国小説を取合せた勧善懲悪因果談。

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