木場(貯木場)(読み)きば

日本大百科全書(ニッポニカ) 「木場(貯木場)」の意味・わかりやすい解説

木場(貯木場)
きば

川下の木材集散地に設けられた貯木場およびその周辺の材木問屋街の名称。古くから木材は河川を利用して運搬されてきたが、河川流域の上流部に良材産地をもつ河川の河口部、たとえば米代(よねしろ)川の能代(のしろ)、熊野(くまの)川の新宮(しんぐう)、吉野川の和歌山、木曽(きそ)川の桑名、天竜川の掛塚(かけつか)などに木場が設けられてきた。

 また、近世になり都市の発達をみるようになると、木材需要の増大を背景に、大消費地の近くの船輸送のできる河口部などにも木場が設けられるようになる。こうした木場での木材取引が盛んになるにつれ、木材業者が木場の周辺に定着し、材木屋の集合した地域も木場とよぶようになった。江戸の深川尾張(おわり)の白鳥(しろとり)、大坂(おおさか)の立売堀(いたちぼり)などが代表的な木場である。

 全国的にも有名な江戸深川の木場は、元禄(げんろく)年間(1688~1704)に日本橋周辺で御用材を扱っていた木材問屋が幕府の命で深川に集められ、木材街を形成することによって生まれた木場である。明治期以降も大都市東京の木材集散地として発展を続け、集積利益を求めた製材工場や合板工場などの集中開設も行われた。東京都の都市計画によって1972年(昭和47)から1974年に深川から夢の島南部に木場の移転が行われ、現在の新木場が生まれた。移転以降は、外材を取り扱う問屋、製材工場が多くなり、国産材の集積、加工基地としての機能を後退させつつある。全国の木場は、どこも新木場と同様の状況をたどっている。

[安藤嘉友・山岸清隆]

『全国林業改良普及協会編・刊『森と木ときのこの日本地図』(1989)』

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