有合(読み)ありあう

精選版 日本国語大辞典 「有合」の意味・読み・例文・類語

あり‐あ・う ‥あふ【有合】

[1] 〘自ハ四〙
① 人がちょうどそこに居あわせる。まさしくそのところにいる。
※土左(935頃)承平五年二月九日「京よりくだりしときに、みな人、子どもなかりき。いたれりし国にてぞ、子うめるものどもありあへる」
② たまたま行きあう。出会う。行きあわせる。また、生きていてそのことに出あう。
※栄花(1028‐92頃)初花「路のほどなどに、夜行の夜などもおのづからありあふらん」
③ ものがたまたまそこにある。折よくその場にある。ありあわせる。
浮世草子・風流曲三味線(1706)六「持(もた)せ来(きた)られし有合(アリアフ)金二百両を」
[2] 〘自ハ下二〙 =ありあう(有合)(一)
金沢文庫古文書‐(年月日未詳)(鎌倉)金沢貞顕書状(一・三三四)「両六波羅家人等ありあえて候を、さしつかはし候ひて」
[語誌](1)同義の「ありあわす」は、近世の西鶴の作品などに例が見られるが、一般化したのはずっと後世らしく、「日葡辞書」「コリャード」「ヘボン」などの諸辞書は、すべて「ありあう」だけを載せている。
(2)(一)①の用法は後世、「ある」と「いる」の使い分けに従って、「いあう(ゐあふ)」「いあわす・いあわせる(ゐあはす)」が用いられるようになった。

あり‐あわ・せる ‥あはせる【有合】

〘自サ下一〙 ありあは・す 〘自サ下二〙
① ものがちょうどよくその場にある。たまたまそこにある。持ち合わせる。
※浮世草子・好色五人女(1686)二「幸(さいわひ)遣銀(つかひぎん)は有合す」
② 人が折よくその場に居あわす。たまたまその場に居る。また、行き合わせる。
※浮世草子・武道伝来記(1687)三「折ふし、御ぜんに豊田隼人(はやと)と云(い)ふ大目付有合(アリアハ)せ」

あり‐あわせ ‥あはせ【有合】

〘名〙 (動詞「ありあわせる(有合)」の連用形名詞化) 特に準備したのではなく、ちょうどその場にあること。また、そのもの。ありあい
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「有合(アリアハセ)の金子三百両先(まづ)手付に相わたされ」
行人(1912‐13)〈夏目漱石塵労「御迷惑で御座いましたらう。ほんの有合(アリアハ)せで」

あり‐あわ・す ‥あはす【有合】

[1] 〘自サ下二〙 ⇒ありあわせる(有合)
[2] 〘自サ五(四)〙 =ありあわせる(有合)
御伽草子・大悦物語(室町時代物語大成所収)(室町末)上「ありのみを三つとり出し、これはありあはしたるものなりとて、さしいたりけり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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