曇・陰(読み)くもる

精選版 日本国語大辞典 「曇・陰」の意味・読み・例文・類語

くも・る【曇・陰】

〘自ラ五(四)〙 (「くも(雲)」を動詞に活用させたもの)
① 雲、霧などで空がおおわれる。
※霊異記(810‐824)上「堯雲更に靄(クモリ)舜雨還(また)(そそ)く〈興福寺本訓釈 靄 久毛利〉」
※土左(935頃)承平五年一月二三日「ひてりて、くもりぬ」
② 光や色などが不明瞭になる。色つやがなくなる。
古今(905‐914)春上・四四「年をへて花のかがみとなる水はちりかかるをやくもるといふらむ〈伊勢〉」
③ 目がかすむ。目がかすんではっきりものを見ることができなくなる。
源氏(1001‐14頃)夕霧「恋しさのなぐさめがたきかたみにて、涙にくもる玉のはこかな」
④ 心がはればれしない状態になる。心がふさぐ。
※続拾遺(1278)釈教・一三八七「くもりゆく人の心の末のよをむかしのままに照す月影〈円空〉」
⑤ 考えなどが、はっきりしなくなる。物事を判断する能力を失う。
※巨海代抄(1586‐99)下「天下を領ずるほどの人が少も曇たらば四海はくらやみとな郎ず」
⑥ 声や音がはっきりしなくなる。涙ぐんだ声になる。
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)三「涙にくもる声を上げ」
心配や悲しみなどのために顔の表情が明るさを失う。
※続俳諧師(1909)〈高浜虚子〉九八「聴診器を当て乍ら其顔はだんだん曇った」
⑧ 怪しい、または疑わしい状態になる。
※浄瑠璃・日本蓬莱山(1685頃)二「我身にくもる覚なし」
⑨ (「面(おもて)曇る」の略) 能楽で、憂愁に沈んで、ふし目になる型をいう。⇔照る

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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