日米原子力協定(読み)ニチベイゲンシリョクキョウテイ

デジタル大辞泉 「日米原子力協定」の意味・読み・例文・類語

にちべい‐げんしりょくきょうてい〔‐ゲンシリヨクケフテイ〕【日米原子力協定】

《「原子力の平和利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」の略称》日本と米国の二国間で、核燃料・原子力関連資機材の移転、専門家・情報の交換、役務の提供など、原子力の平和利用に向けた協力の枠組みについて定めた協定。昭和63年(1988)発効。平成30年(2018)に30年の満期を迎え自動延長。日米原子力協力協定
[補説]日米間では、昭和30年(1955)に、日本への研究炉および濃縮ウラン供与を目的として、「原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」が締結され、以後改正が重ねられてきた。昭和63年発効の現行協定は、日本での使用済み燃料再処理等について、米国が一括して事前承認する「包括的事前同意」方式を採用。これにより、日本は非核保有国の中で唯一、核兵器転用可能なプルトニウムの保有が認められている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日米原子力協定」の意味・わかりやすい解説

日米原子力協定
にちべいげんしりょくきょうてい

正式には「原子力の平和利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国との間の協定」という。日米原子力協力協定とも略される。日本の原子力平和利用はアメリカとの協力を軸として発展してきた。この協定を通じて、日本はアメリカから濃縮ウラン、原子力資機材、技術を導入し、アメリカと原子力先進技術の研究協力を進めてきた。他方、この協定によってアメリカの核不拡散政策によるもろもろ規制を受けてきた。日本は多くの国と原子力協定を結んでいるが、日米原子力協定は、もっとも重要な協定である。

 日米原子力協定が初めて締結されたのは、1955年(昭和30)で、研究用原子炉と濃縮ウランの供給を受けるための研究協力協定であった。その後1968年に商業用原子炉を対象とする包括的な協定が結ばれた。この協定では、再処理や資材第三国への移転などの個別のケースごとにアメリカの事前同意が必要とされ、アメリカの政権の原子力政策次第で、とくに核燃料サイクルの面で制約を受ける場合があった。

 この仕組みを大幅に変えたのが、1988年に発効した現行の協定である。双務性の確保や「包括事前同意制度」(あらかじめ定めた枠内で、再処理等の諸活動を一括して事前に承認する方式)を導入した現行協定は、2018年に有効期限を迎える。

[遠藤哲也]

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百科事典マイペディア 「日米原子力協定」の意味・わかりやすい解説

日米原子力協定【にちべいげんしりょくきょうてい】

原子力平和利用に関し協力を約する日米両国間の協定。1958年発効の旧協定により日本原子力研究所の動力試験炉などが建設された。1968年に期限30年間の新協定が発効。これにより濃縮ウランとプルトニウムが日本に供給されることになった。1978年米国の核不拡散法により,日米原子力協定も,1.米国から供給された核燃料等を用いての再処理・再輸送,およびプルトニウムや濃縮度20%以上のウランの貯蔵には,米国の承認を必要とする,2.米国の供給する核燃料等を国際原子力機関の監視下に置く,など規制が強化された。1988年全面改定されて新協定が発効した。期限は30年。新協定は,日本への濃縮ウラン供給に対して米国の規制が強化された反面,使用済み核燃料の輸送や再処理に関し,1回ごとの米国の同意は必要がなくなり,包括事前同意方式が導入された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日米原子力協定」の意味・わかりやすい解説

日米原子力協定
にちべいげんしりょくきょうてい
Agreement for Cooperation between the Government of Japan and the Government of the United States of America concerning Civil Uses of Atomic Energy

正式には「原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」という。すなわち,日本の原子力平和利用に協力し,軍事利用を防止するために核燃料や研究用特殊核燃料物質,重水などの資材提供および技術交流に関して規定した日米間の政府間協定である。 1955年6月にワシントン D.C.で調印され (1958.12.発効) ,68年2月に改訂された。さらに 74年5月のインドの核爆発実験をきっかけとして成立したアメリカ核不拡散法により 87年 11月新協定が締結された (88.7.発効) 。使用済み核燃料の再処理などに関して包括事前同意方式が導入されている。

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