新田郷(読み)にいたごう

日本歴史地名大系 「新田郷」の解説

新田郷
にいたごう

和名抄」東急本・高山寺本ともに訓を欠く。同書東急本の播磨国揖保郡新田郷には「尓比多」、武蔵国多磨郡・安房国朝夷郡など五国の新田郷には「尓布多」の訓が付されている。東急本が上野国新田郡を「尓布太」と訓じ、「万葉集」巻一四に「尓比多夜麻」(新田山)の名がみえるところから、「にいた」「にふた」両様の訓じ方が可能であろう。便宜上前者をとっておく。当郷は「延喜式」兵部省諸国駅伝馬条に載せる新田駅(「和名抄」高山寺本居処部駅名項は「新日」と載せるが、誤記と考えられる)の所在地である。

新田郷
にうたごう

「和名抄」所載の郷で高山寺本では迩布多、東急本では尓布多と訓じ、名博本ではニフタとする。「日本地理志料」は「安房国誌」を引用し、旧瀬戸せと村に爾布にふ川、瀬戸の北西に宇田うだ村があることから旧宇田村を中心とした現千倉ちくら町瀬戸・宇田から白子しらこ川合かわい牧田まきだ川戸かわとなどの地域一帯かとし、「大日本地名辞書」も同じく「安房国誌」から瀬戸・宇田などの一帯に比定している。千倉町の瀬戸川流域には弥生時代から大規模な集落が形成されており、古墳時代には集落はもとより、宇田の本郷ほんごうには後期の帆立貝式前方後円墳一基を含む本郷上ほんごうかみたい古墳群や一反田いつたんだ古墳群・大和田おおわだ古墳・雲龍寺うんりゆうじ古墳などがあり、朝夷郡のなかでも高塚古墳の集中する地域となっている。

新田郷
にうたごう

「和名抄」諸本に「尓布多」の訓がある。「大日本地名辞書」「岡山県通史」とも明治二二年(一八八九)成立の本荘ほんじよう村・熊山くまやま村とする。現和気郡和気町衣笠きぬがさ福富ふくとみを中心とした初瀬はつせ川流域と、吉井川東岸の現赤磐あかいわ熊山くまやま町地域にあたる。衣笠には入田にゆうたの地名が残る。推定郷域内には多くの遺跡がある。熊山町千躰せんだ大谷おおたに山山頂近くに全長約五九メートルの古式の前方後円墳である武宮たけみや古墳、近くに五世紀前半期の方墳大谷山おおたにやま古墳があり、ともに吉井川の渡河点を見下ろす位置に築造されている。衣笠の塔田とうだからは白鳳期の軒丸瓦が採取されており、和気廃寺と称されている。

新田郷
にうたごう

「和名抄」高山寺本では「迩布多」と訓を付す。「日本地理志料」では大衡おおひら大瓜おおり駒場こまば(現大衡村)志戸田しとだ一関いちのせき二関にのせき三関さんのせき富谷とみや(現富谷町)吉田よしだ小野おの吉岡よしおかいま(現大和町)などにわたる地とする。「大日本地名辞書」では富谷、鶴巣つるす(現大和町)の地としている。

新田郷
あらたごう

「和名抄」高山寺本・東急本ともに訓を欠いているが、国郡の新田郡に「尓布太」と訓ずる。「延喜式」では新田郡を「ニツタ」(民部省)、「ニフタ」(兵部省)と振仮名している。新田は「しんでん」で、新しく開墾された田の意である。七世紀の初めに利根川の氾濫地帯を開田し、そこに八世紀頃新田郷が成立したとみられる。七世紀には各豪族が系譜作りを行うが、上毛野君の場合、始祖を豊城入彦、祖名を荒田別とした。

新田郷
につたごう

鎌倉期にみえる地名。出雲国神門かんど武志たけし郷のうちに属する。現在の出雲市武志町ないし簸川ひかわ斐川ひかわ町のうちと推定されるが、比定地は明確ではない。康元元年(一二五六)一二月日の杵築大社領注進状(北島家文書)に「一 新田郷拾弐町壱段参佰歩」とあり、定田は九町二段一二〇歩で、斗代は比較的高率の八斗であった。このことより推測すると、当郷は武志郷に隣接し、早くから開発が進められた地域と考えられる。また同文書には「同郷」(武志郷の意)の押紙が付されており、新田郷の「新田」はおそらく武志郷に対する新田開発地の意味と思われる。

新田郷
につたごう

「和名抄」所載の郷。同書高山寺本に「迩布多」、東急本に「尓布多」の訓がある。現豊岡市の円山まるやま川右岸、百合地ゆるじ河谷こうだに中谷なかんだに木内きなし駄坂ださかなどを含む六方ろつぽう田圃とよばれる地域とされる。

新田郷
にうたごう

「和名抄」所載の郷。同書高山寺本に「迩布多」、東急本に「尓布多」と訓じる。武蔵国国分寺瓦に「玉尓太」とヘラ書されているのは、当郷関係であろう。「風土記稿」は式内布多天ふたて神社の社名を「ニフタ」の「ニ」が脱落したものとみ、同社の鎮座する現調布市調布ヶ丘ちようふがおかの辺りに比定している。

新田郷
につたごう

「和名抄」所載の郷。同書高山寺本など諸本とも訓を欠く。安房国朝夷あさい郡および武蔵国多摩たま郡の同名郷に迩布多の訓があるので、ニフタであろう。天平勝宝五年(七五三)六月一五日の仕丁送文(正倉院文書)に安比留郡新田郷とあり、戸主日下部智万呂戸口の日下部子真人がみえる。

新田郷
にいたごう

「和名抄」所載の郷。訓は東急本に「爾比多」。「播磨国風土記」に関連する地名はない。「日本地理志料」「大日本地名辞書」ともに中世の福井ふくい庄域、現姫路市南西部の網干区福井あぼしくふくい一帯を想定するが、詳細は不明。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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