撮棒(読み)さいぼう

改訂新版 世界大百科事典 「撮棒」の意味・わかりやすい解説

撮棒 (さいぼう)

邪気穢気をはらう呪力を持つとされた長い木の棒。鉄製突起などをつけたものを鉄撮棒(かなさいぼう)という。先を丸くくびれさせた形状からみて,陽物をかたどったものと推定される。従僧法師警固のために担う棒,祇園会のさい犬神人(いぬじにん)が持つ棒,刑吏としての放免が担ぐ鉾,非人の長吏の突く棒など,みな撮棒あるいはその変形である。《峯相記》や《太平記》は撮棒・鉄撮棒を駆使する悪党・悪僧を描いているが,これは飛礫(つぶて)と同様,撮棒の持つ破邪の力が武器として用いられたもので,中世後期,その呪力が衰えるとともに,棒を使う兵法,棒術がそこから生まれてくる。長刀や〈かぶき者〉の持つ大刀もその流れをくむものと思われる。一方,それは子どもたちが若い女性,嫁の尻を打ち歩くときの〈山の神のさいでん棒〉や〈さいまる棒〉,綱引競技に若者頭が手に持つ〈ざいふり棒〉などとして,民俗の世界に長く生命を持ちつづけている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android