播種性(読み)はしゅせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「播種性」の意味・わかりやすい解説

播種性
はしゅせい

播種とは作物の種(たね)を播(ま)くことであり、播種性は散在性あるいは散布性とも表現されるように、ほかの組織や器官臓器あるいは全身に広がるという意味である。とくに悪性腫瘍(しゅよう)の体腔(たいくう)内への散在性の広がり(播種性転移)を表現する際などに用いられる。ほかに細菌やウイルスに感染し病原体が全身に広がる場合や、全身のおもに細血管内で、散布性に微小血栓が形成される場合(播種性血管内凝固)にも用いられる。

 腫瘍の播種性転移の表現には、四肢などに丘疹(きゅうしん)を生じ尿崩症なども伴う播種性黄色腫などもあるが、これは自然寛解することもある良性腫瘍で、おもに器官や臓器に発生した悪性腫瘍が散在性に転移した場合に用いることが多い。免疫低下状態で病原体に感染し全身に広がる病態を表すものには、播種性アスペルギルス症や播種性クリプトコッカス症などがある。播種性血管内凝固症候群(DIC:disseminated intravascular coagulation)は、癌(がん)やほかの基礎疾患があって、全身の細小血管内に播種性に微小な凝固血栓が形成され、虚血性の臓器障害や出血を生じる。

 その他遺伝性の皮膚疾患で、汗孔に角化異常がみられ皮疹を伴う播種性汗孔角化症では、皮疹がしだいに増えるという意味で播種性が用いられる。

[編集部 2016年11月18日]

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