掻付(読み)かきつく

精選版 日本国語大辞典 「掻付」の意味・読み・例文・類語

かき‐つ・く【掻付】

[1] 〘自カ四〙 (「かき」は接頭語)
① しっかりとつく。とりつく。しがみつく。つかまる。かいつく。
古事記(712)下・歌謡「手胼(たこむら)に 虻(あむ)加岐都岐(カキツキ)
徒然草(1331頃)八九「猫また〈略〉足許へふと寄りきて、やがてかきつくままに、頸のほどを食はんとす」
② 生活や心のよりどころとして頼りにする。とりすがる。
源氏(1001‐14頃)蓬生「冬になり行くままに、いとどかきつかむ方なく」
[2] 〘他カ四〙 (とりすがってせがむところからか) ねだって自分のものにする。
浮世草子好色一代女(1686)五「はうばいの若い者に絹のきゃふかきつき」
[3] 〘他カ下二〙 ⇒かきつける(掻付)

かき‐つ・ける【掻付】

〘他カ下一〙 かきつ・く 〘他カ下二〙
① 髪などをくしでなでつける。
※続詞花(1165頃)恋「草枕ねくたれがみをかきつけしそのあさがほの忘られぬ哉〈大江匡房〉」
文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉初「前髪を左りへ掻(カ)き付(ツ)けたり、右へ掻(カキ)付けたりする」
② しっかりと組み立てたり、編んだりする。
月詣(1182‐83)二「あたらしや賤の柴垣かきつくるたよりにたつる玉の小柳源仲政〉」
③ (「かき」は接頭語) つける。とりつける。
古今著聞集(1254)一九弓矢かきつけて」

かっ‐つ・く【掻付】

(「かっ」は接頭語)
[1] 〘自カ四〙 =かきつく(掻付)(一)
歌舞伎御国入曾我中村(1825)三立「『三衣にあらぬ武門のいでたち。名も其ままに禅司坊』『お供にかっつく某は、名におふ曾我の世界には、重い役目の御家老職』」
[2] 〘他カ下二〙 =かきつく(掻付)(三)
太平記(14C後)二八「我先に射て取らんと、弓押張箞(うつぼ)掻著(カッツケ)

かい‐つ・く【掻付】

(「かきつく(掻付)」の変化した語)
[1] 〘自カ四〙 とりすがる。すがりつく。抱きつく。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「婿取りつるに、〈略〉逢はせし夜よりかいつきて、あはれにいみじき契りをす」
[2] 〘他カ下二〙 しっかりとつける。とりつける。ぬりつける。
※源氏(1001‐14頃)常夏「紅(べに)といふものいとあからかにかいつけて」

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