抱水クロラール(読み)ホウスイクロラール

デジタル大辞泉 「抱水クロラール」の意味・読み・例文・類語

ほうすい‐クロラール〔ハウスイ‐〕【抱水クロラール】

最初に発見された睡眠薬クロラールに水を化合させて製した無色結晶直腸麻酔に用いられる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「抱水クロラール」の意味・読み・例文・類語

ほうすい‐クロラール ハウスイ‥【抱水クロラール】

〘名〙 (クロラールはChloral) クロラールに水を加えてつくる、刺激性のある無色結晶。鎮痙作用、催眠作用がある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「抱水クロラール」の意味・わかりやすい解説

抱水クロラール
ほうすいくろらーる
chloral hydrate

睡眠・抗けいれん剤。無色の結晶で刺激性のにおいがあり、味は刺激性でやや苦味を有している。古くから合成されており、日本薬局方には第一版より収載されている。バルビツール酸系睡眠剤が開発される以前には繁用されたが、現在ではまれにしか用いられない。小児のけいれん抑止、催眠・鎮静目的とし、直腸から注入する。内服では胃粘膜を刺激するので、大量の水とともに服用する。劇薬極量は1回2グラム、1日5グラム。

[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「抱水クロラール」の解説

抱水クロラール
ホウスイクロラール
chloral hydrate

2,2,2-trichloro-1,1-ethanediol.C2H3Cl3O2(165.41).Cl3CCH(OH)2トリクロロアセトアルデヒドに必要量の水を加えると得られる.白色の結晶.刺激臭,苦味がある.融点57 ℃,沸点98 ℃.沸点でクロラールと水に分解する.水に易溶,エタノールエーテルクロロホルムに可溶.アルカリを作用させるとクロロホルムを生成し,アンモニア性硝酸銀を還元する.DDTの製造に用いられ,催眠,抗けいれん剤に使われる.LD50 1100 mg/kg(マウス,経口).[CAS 515-83-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「抱水クロラール」の意味・わかりやすい解説

抱水クロラール【ほうすいクロラール】

化学式はCCl3CH(OH)2。無色の結晶。融点51.6℃,96℃でクロラールと水に分解。水に易溶,エタノールに可溶。DDTの原料や鎮静・催眠薬として用いられた。エタノールに塩素を作用させてクロラールを得,これに水を付加して抱水クロラールとする。
→関連項目クロラール

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抱水クロラール」の意味・わかりやすい解説

抱水クロラール
ほうすいクロラール
chloral hydrate

C2H3Cl3O2 。刺激性の臭気をもつ無色の結晶で,融点 51.6℃。トリクロロアセトアルデヒド (クロラール) の水和物であり,加熱すると 96℃でクロラールと水に分解する。不安定なクロラールの保存形態として利用される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「抱水クロラール」の意味・わかりやすい解説

抱水クロラール (ほうすいクロラール)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の抱水クロラールの言及

【クロラール】より

…重合しやすく,白色粉末のメタクロラールとなる。また当量の水と水和物を形成し,抱水クロラールchloral hydrate CCl3CH(OH)2となる。抱水クロラールは,融点51.6℃の無色板状結晶で,96℃でクロラールと水に分解する。…

【向精神薬】より

…19世紀になって多くの薬がつくられ,1850年に臭素が性欲を抑えること,翌年にはその抗癲癇(てんかん)作用が発見された。69年に抱水クロラールが睡眠薬に使われ,1903年にはバルビタールも合成された。しかし,実際に精神治療薬が現れたのは第2次大戦後である。…

【催眠薬】より

…もともとベンゾジアゼピン類は抗不安薬として開発されたものであるが,睡眠誘導薬としての評価が高まっており,バルビツレート系催眠薬に代わってよく用いられるようになっている。(2)抱水クロラール 1832年J.F.vonリービヒによって合成され,69年に初めて使われた。最も古い催眠薬で,バルビツレート以前にはよく用いられた。…

※「抱水クロラール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」