手抜（読み）てぬき

精選版 日本国語大辞典

て‐ぬき【手抜】

〘名〙

① 手を抜くこと。しなければならない手続・手段を故意にしないでおくこと。するはずの一部を省略しながら、完全になしとげたもののようにごまかしておくこと。

※俳諧・女夫草（1672）「作らんと切りひろげたる大田原 売るに手ぬきを炭の数数」

② 仕事の手がやすまること。ひまになること。

※浮世草子・日本新永代蔵（1713）三「商人は随分手全く律義にすべし、一旦はいかにも手ぬきのなるものなれ共」

③ 四国や九州で、赤ん坊に初めて産衣(うぶぎ)を着せること。また、その産衣。手通(てとおし)。

※交隣須知（１８Ｃ中か）三「吐手 テヌキ カケタニヨリ ウテ クヒカ アタタカニコサル」

④ 囲碁・将棋で、相手の着手に対して直接応手をしないで、他の場面にまわること。

て‐ぬかり【手抜】

〘名〙 物事を行なう際、その手続・手段が不十分であること。注意がゆきとどかないで仕損じること。気付かなかったところからくる失策。ておち。てぬけ。

※歌舞伎・韓人漢文手管始（唐人殺し）（1789）二「家来共、我達は国境の関所へ参り、往来の吟味手ぬかりなきやう、得(とく)と申含めて」

て‐ぬけ【手抜】

〘名〙 ＝てぬかり（手抜）

※談義本・根無草（1763‐69）後「わけて義兵衛は孝行なる男にて、看病に手ぬけもなく」

出典　精選版 日本国語大辞典