精選版 日本国語大辞典 「往来」の意味・読み・例文・類語
おう‐らい ワウ‥【往来】
〘名〙
① (━する) 人や事物が行ったり来たりすること。また、その人。
(イ) ある場所へ、また、ある道をゆききすること。行ったり帰ったりすること。ゆきき。通行。
※万葉(8C後)四・五三六・左注「未レ有二幾時一既絶二往来一累レ月之後更起二愛心一」 〔詩経‐小雅・巧言〕
(ロ) 互いにゆききすること。交際すること。
※日本読本(1887)〈新保磐次〉六「西は東を攻め、南は北と戦ひ、物を掠め土地を奪ふ習ひなりしかば、相往来するの心はなく」
(ハ) 補任すること。〔醍醐寺新要録(1620)〕
(ニ) (考えなどが)消えたり浮かんだりすること。
※半日(1909)〈森鴎外〉「こんな考は余程早くから博士の胸に往来してゐる」
② 廻国修行の行脚(あんぎゃ)。
※謡曲・鵜飼(1430頃)「げに往来の利益こそ、他を助くべき力なれ」
※艸山集(1674)二二・谷口歌「山水雖レ可レ愛、恨接二往来一未二幽邃一」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉三「往来へ出ると何もしないで店先の看板ばかり見て歩行(ある)いて居る」
④ 手紙。特に往復書簡。また、そのやりとり。訪問時の贈答。
※宇津保(970‐999頃)国譲中「わうらい月日書きてせん立てて、御名し給へり」
※壒嚢鈔(1445‐46)一「庭訓の往来の詞に」
⑥ 「おうらいてがた(往来手形)」の略。
※歌舞伎・八重霞曾我組糸(1823)序幕返し「疑がやるなら順礼の、この往来(ワウライ)が慥(たし)かな証拠」
⑦ 熱が出たり引いたりすること。「寒熱往来」
⑧ 相場が一定の範囲内を上下して、大幅な値動きをしないこと。持合い。
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