家庭医学館 「急性灰白髄炎(ポリオ)」の解説
きゅうせいかいはくずいえんぽりお【急性灰白髄炎(ポリオ) Poliomyelitis Anterior Acuta】
ポリオウイルスが感染して、脊髄(せきずい)の灰白質(かいはくしつ)という部分をおかすため、数日間かぜをひいたような症状が現われたのち、急に足や腕がまひして動かなくなる病気です。
夏から秋にかけて、日本では幼児がかかりやすいのですが、1961年から予防接種が行なわれるようになって以来、発病数が激減し、現在ではまれな病気になりました。
しかし、海外旅行から帰った人に、ポリオウイルスの保有者がときどき見つかるので、油断はできません。
[症状]
潜伏期は1~2週間です。発病初期は、熱が出て頭や背中が痛み、汗が出て、だるく、嘔吐(おうと)や下痢(げり)をすることがあるなど、夏かぜに似た症状になります。
このような症状が1~4日続いて熱が下がるころ、足や腕に力が入らなくなってまひしてきます。重症の場合は、胸の筋肉や横隔膜(おうかくまく)までまひし、ときには呼吸中枢(こきゅうちゅうすう)のある延髄(えんずい)までウイルスにおかされ、呼吸ができなくなって、死亡することもあります。
しかし、こうなるのはごく少数で、たいていは、かぜのような症状だけで、まひはおこらずに治ります。
さらに、なんの症状も現われず、本人も知らないうちに免疫ができて治ってしまう不顕性感染(ふけんせいかんせん)が95%を占めています。
[治療]
感染症予防法で2類感染症に指定されています。
病原ウイルスに効く薬はないので、寝て安静を保つことがたいせつです。背骨が痛ければ、温湿布(おんしっぷ)や鎮痛薬(ちんつうやく)を用い、呼吸困難が生じたら、レスピレーター(人工呼吸器)を用います。まひが生じたら、マッサージ、電気療法、運動療法などのリハビリテーションで回復をはかります。
[予防]
おもな感染源は、糞便(ふんべん)中にいるウイルスですが、のどにいるウイルスも感染源になります。したがって、病人は入院して治療し、糞便、鼻やのどの分泌物(ぶんぴつぶつ)で汚染されたものは消毒します。
予防にもっとも効果があるのは予防接種(予防接種とはの「予防接種の種類」)です。