忌忌(読み)いまいましい

精選版 日本国語大辞典 「忌忌」の意味・読み・例文・類語

いまいま‐し・い【忌忌】

〘形口〙 いまいまし 〘形シク〙
① けがれに触れたり、または出家などの身分がらのため、斎(い)み慎まなければならない。はばかるべきである。(不吉なので)避けなければいけない。
源氏(1001‐14頃)松風「ゆゆしきまで、かく、人に違(たが)へる身をいまいましく思ひながら」
② 不吉である。縁起が悪い。忌まわしい。
※源氏(1001‐14頃)柏木「お前近き桜の、いとおもしろきを『ことしばかりは』とうちおぼゆるも、いまいましき筋なりければ、『あひ見む事は』と口ずさびて」
③ 陰気である。暗くうち沈んでいて活気がない。
平家(13C前)六「入道権威にはばかって、かよふ人もなし。禁中いまいましうぞ見えける」
④ 満足できず、心残りである。後悔される。
今昔(1120頃か)二九「年の始めの走り者を生(いけ)て、不食(くは)ざらむは忌々しき事也」
⑤ いやな感じである。感心しない。
古本説話集(1130頃か)三八「あな、おほけな。かかる事ないひそ。さまにも合はず、いまいまし」
⑥ (感動表現として) まあいやだ。まああきれた。
※平家(13C前)五「あないまいまし。打手(うって)大将軍の矢ひとつだにも射ずして、逃げのぼり給ふうたてしさよ」
⑦ しゃくにさわる。してやられたり、思うようにならなかったりして、非常に腹立たしい。
談義本・風流志道軒伝(1763)二「風流の若い者は魂のおり所を知らず、コリャマタ組がはり込(こみ)も、いまいましい程美しい」
[語誌]同じ不吉さを表わすのでも、「いまいまし」は具体的な事例に対して「忌み払いのけたい」感情であるが、類義語「ゆゆし」は観念的・抽象的に「封じ込めておきたい」感情を表わす。「ゆゆし」は派生的に良い意味にも用いられるが、「いまいまし」は悪い意味にしか用いられない。「いまいまし」が「してやられたくやしさ」を表わすのは中世以後で、平安時代にはその気持は「ねたし」で表現された。
いまいまし‐が・る
〘他ラ五(四)〙
いまいまし‐げ
〘形動〙
いまいまし‐さ
〘名〙

いみいみ‐し【忌忌】

〘形シク〙 =いまいましい(忌忌)〔黒本本節用集(室町)〕
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉二「大樹上洛の際に臨み最(いと)忌々(イミイミ)しき事なり」

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