日本大百科全書(ニッポニカ) 「年増(歌舞伎舞踊)」の意味・わかりやすい解説
年増(歌舞伎舞踊)
としま
歌舞伎(かぶき)舞踊。常磐津(ときわず)。3世桜田治助(じすけ)作詞。5世岸沢式佐(しきさ)作曲。2世藤間勘十郎振付け。1839年(天保10)3月江戸・中村座で、4世中村歌右衛門(うたえもん)初演の江戸八景を題材にした八変化(へんげ)舞踊『花翫暦色所八景(はなごよみいろのしょわけ)』のうち、「隅田堤に旁妻の晩鐘(かくしづまのばんしょう)」の場面が独立したもの。晩春の向島(むこうじま)の土手を背景に、芸者出身の妾(めかけ)とみられるあだな年増の姿を描いた作。駕籠(かご)から現れた年増が、自分の男を別の女と争ったいきさつを物語るところが見せ場で、常磐津舞踊独特の仕方話の振(ふり)に、踊り手の技量が示される。現代では6世歌右衛門、7世中村芝翫(しかん)、4世中村雀右衛門(じゃくえもん)らが得意としている。
[松井俊諭]