平物(読み)ヒラモノ

デジタル大辞泉 「平物」の意味・読み・例文・類語

ひら‐もの【平物】

菊の園芸品種で、単弁花びらが平らに開くものの総称
能楽で、特に習い物でない、普通の曲。
邦楽で、特に秘曲許し物でない、普通の曲。
演劇などの大道具うち切り出しのような平面的なもの。→丸物まるもの

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精選版 日本国語大辞典 「平物」の意味・読み・例文・類語

ひら‐もの【平物】

〘名〙
① (「平らなもの」の意) 長大な材を二つ割にして、扁平に製材した木材
※俳諧・引導集(1684)「しゃくせん檀の角物平物 鴟口をふりさけ行は恋の道〈西鶴〉」
② 菊の園芸品種の一群。平咲きの単弁のものの称。⇔厚物
③ 能楽で、普通の曲のこと。習物(ならいもの)に対していう。
歌舞伎の大道具の一つ。厚紙ベニヤ板などを切り抜いて、立木石灯籠、建物などに見せかけたもの。切出し。丸物に対していう。

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世界大百科事典(旧版)内の平物の言及

【習】より

…なにをもって習とするかは,シテ方・ワキ方・狂言方・囃子方の各役,および各流派,能・素謡・仕舞などの演奏形式によって違う。したがって,シテ方では習物でも,他の役では平物(ひらもの)であるとか,仕舞は平物でも謡は習物であるとかいう例も生ずる。しかし,一般に大曲,秘曲と目されている演目,たとえば能の《石橋(しやつきよう)》や《道成寺》,老女物の《姨捨(おばすて)》《関寺小町》《檜垣》《鸚鵡(おうむ)小町》《卒都婆小町》など,また狂言の《釣狐》《花子(はなご)》などは,各流派,各役種とも習に扱っている。…

【平曲】より


[構成と音楽的性格]
 《平家物語》は〈小督〉〈宇治川〉など200余の章段からなるが,平曲ではその章段を〈句〉とよぶ。前田流の分類によると,句は〈平物(ひらもの)〉〈伝授物〉〈灌頂巻(かんぢようのまき)〉〈大秘事〉〈小秘事〉に分けられる。〈平物〉は普通に教授される曲であり,〈伝授物〉は平物を50句ないし100句おさめたあとに伝授され,《腰越》などの〈読物(よみもの)〉,《都遷》などの〈五句物〉,《清水炎上》などの〈炎上物〉,《源氏揃》などの〈揃物(そろいもの)〉の曲がある。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」