小歌・小唄(読み)こうた

精選版 日本国語大辞典 「小歌・小唄」の意味・読み・例文・類語

こ‐うた【小歌・小唄】

〘名〙 邦楽種目。室町以前は「小歌」と書かれたが、江戸時代から「小唄」の字が使われ始め、現在のものは小唄と書かれる。時代により意味と曲風が違う。
① 平安時代、朝廷で公的に制定された儀式歌謡の大歌に対し、民間の通俗な歌(民謡、流行歌)をいう。歌詞の長短には関係がない。五節(ごせち)の際に女官がうたった。⇔大歌
※琴歌譜(9C前)長埴安振「自余小歌同十一月節
② 鎌倉・室町時代、民間に流行した庶民的な歌。七五調を中心とした短いもので、恋をテーマにしたものが多い。隆達小歌、狂言小歌など。「閑吟集」には、当時の小歌が数多く収められている。
太平記(14C後)二二「篠塚些も騒がず、小歌にて閑々(しづしづ)と落行けるを」
③ 江戸時代、俗謡小曲の総称上方では「小歌」江戸では「小唄」と書くことが多かった。三味線伴奏に使い、自由リズムでなく、ほとんど拍子にはまる曲となったことが、室町以前と違う。現在の小唄は、江戸小唄または早間(はやま)小唄といわれ、江戸末期に端唄(はうた)から派生し、明治時代以降流行した。
仮名草子・身の鏡(1659)中「ただ酒のふて、小歌(コウタ)こそおもしろけれと」
④ 能・狂言の中で、室町時代の俗謡を取り入れた部分

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