寝・寐(読み)ねる

精選版 日本国語大辞典 「寝・寐」の意味・読み・例文・類語

ねる【寝・寐】

〘自ナ下一〙 ぬ 〘自ナ下二〙
① からだを横たえる。また、宿泊する。眠る。
(イ) からだを横たえて休む。臥(ふ)す。
万葉(8C後)八・一六三一「今造る久邇(くに)の都に秋の夜の長きに独り宿(ぬる)が苦しさ」
和泉式部日記(11C前)「いかになりぬるにかと思ひつづくるに、いもねられず。目もさましてねたるに」
(ロ) 異性と共寝(ともね)をする。同衾(どうきん)する。性交婉曲にいうばあいにも用いる。
古事記(712)上・歌謡「我が率(ゐ)(ネ)し 妹は忘れじ 世の尽(ことごと)に」
※霊異記(810‐824)上「天皇、后と大安殿に寝(ネテ)婚合したまへる時に〈興福寺本訓釈 寝 禰天〉」
(ハ) 宿泊する。とまる。旅寝する。
※古事記(712)下・歌謡「多遅比野に 泥(ネ)むと知りせば 防壁(たつごも)も 持ちて来(こ)ましもの 泥(ネ)むと知りせば」
(ニ) 眠りにつく。ねむる。寝入る。
※万葉(8C後)五・八三一「春なればうべも咲きたる梅の花君を思ふと夜寝(よい)も禰(ネ)なくに」
※浮世草子・傾城色三味線(1701)湊「ねてもさめてもわすれぬは、都の遊びなりけらし」
(ホ) 病気になって床につく。寝こむ。「流感で一週間も寝た」
② 物が倒れる。
※新撰大阪詞大全(1841)「ねたとは、たをれたること」
※桑の実(1913)〈鈴木三重吉〉二五「鬢が寝ないで変でございませうね」
③ 返さないでいる。
※浮世草子・傾城色三味線(1701)京「多くの借銭も寝(ネ)伏見の里に、今は謡の師をして」
④ 十分活用されない状態になる。特に、売れゆきが悪く商品が残ったり、資金が固定して生かされなくなったりすることをいう。
※あらくれ(1915)〈徳田秋声〉六五「資本(もと)がなくちゃ駄目だよ。金の寝る商売だからね」
⑤ ゲームや戦いなどの時、その回を休む。
暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉三「四人なら誰れか寝(ネ)ますから、寝(ネ)た人が後見をすればいいんですもの」
みそしょうゆ、酒などが仕込まれた状態である。
料理物語(1643)二〇「浜名納豆は〈略〉よく合せて、ねさせてこもをふたにして、三日ばかり置てみれば、よくね申候」
[補注](1)同義語として名詞「寝(い)」に動詞「寝(ぬ)」が付いた「いぬ」があり、「いをぬ」の形などで用いることも多かった。
(2)類義語には「ねむる」がある。→「ねむる(眠)」の補注

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