安中(市)(読み)あんなか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「安中(市)」の意味・わかりやすい解説

安中(市)
あんなか

群馬県南西部、碓氷(うすい)川河谷平野の中心都市。1958年(昭和33)市制施行。2006年(平成18)碓氷(うすい)郡松井田町(まついだまち)を合併。東から北は高崎市に接し、JR北陸新幹線、信越本線と国道18号が通じ、上信越自動車道の松井田妙義と碓氷軽井沢インターチェンジがあり、交通が便利である。中心の安中は、碓氷川左岸の河岸段丘上に立地して中山道(なかせんどう)に沿う街村型集落で、碓氷峠を扼(やく)し、近世安中藩(板倉氏)3万石の城下町であるとともに、近隣に広く助郷(すけごう)をもつ重要な宿場町として、また市場町として繁栄した。市場町は2、7の日を市日として繭、生糸、雑貨などを扱う六斎市(ろくさいいち)であった。同じく中山道の板鼻(いたはな)宿、松井田宿、碓氷峠東麓の坂本宿とともに上野(こうずけ)(上州(じょうしゅう))七宿の一つであった。横川には碓氷関所が置かれた。江戸時代の安中は各種の機能をもっていたが、1893年(明治26)信越本線開通の打撃を受けて一時衰退し、付近農村の一中心町にすぎなくなった。ところが1937年(昭和12)東邦亜鉛安中製錬所の大規模工場建設を機縁として市況が復活。工場は市街地から離れ、安中駅に近い丘陵の斜面に敷地36万平方メートルの広さを占め、公害を発生し訴訟問題となった。また磯部(いそべ)には信越化学工業の工場があり、磯部温泉も有名。同志社大学の創立者新島襄(にいじまじょう)の出身地で旧宅もある。中宿地区に伝わる農民芸能「糸操灯籠人形(とうろうにんぎょう)」は国の重要無形民俗文化財(登録名は「安中中宿の燈篭人形」)。後閑城址(ごかんじょうし)公園のサクラ、秋間(あきま)梅林や杉並木(原市(はらいち))も知られる。面積276.31平方キロメートル、人口5万4907(2020)。

[村木定雄]

『『安中市誌』(1964・安中市)』『『安中市史』全6巻(1998~2003・安中市)』


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