学校病(読み)がっこうびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「学校病」の意味・わかりやすい解説

学校病
がっこうびょう

学校病は児童・生徒の多くにみられる疾病または異常の俗称。学校保健のなかでの保健管理として学校健診が施行され、学校医、専門医らにより、事後措置への指導が行われる。学校健診の目的はその時代の学童期疾患の発見と予防に目が向けられ、1963年(昭和38)文部省(現、文部科学省)は『学校病予防の手びき』を刊行した。近年それまでの疾患の減少に伴い、児童・生徒の学校生活に影響が強い慢性疾患である心臓病や腎臓病への管理や、スクリーニングふるい分け)に視点が向けられ、1973年に学校保健法が改定され、さらに1994年(平成6)に施行規則を一部改訂する省令が制定された。この健康診断の基本的考えは、児童・生徒が生涯にわたり健康な生活を送れること、学校健診は確定診断ではなくスクリーニングであること、健康診断の結果が個人的・集団的に有用に用いられ今後の健康教育に発展すること、などが前提になっている。学校健診は、これまでの内科耳鼻科眼科、歯科検診などに加え、心臓病や腎臓病などの慢性疾患や貧血のスクリーニングが新たに取り入れられた。子供を取り巻く生活環境は食形態の変化、遊びの形態の変化や遊び場の減少などによる運動不足、精神的ストレスの増加など、生活習慣病危険因子が増大している。そこで小児生活習慣病の予防に関するリスクファクターとして、詳しい家族歴、血圧測定、血中コレステロールの測定、尿検査、肥満度の測定をすることで小児の将来に向けた健康指導が行われるようになった。また学校生活に影響を及ぼすアレルギー疾患喘息(ぜんそく)など)、心身症、起立性調節障害、痙攣(けいれん)性疾患、やせ、不登校などにも対応し、学校生活のクオリティ・オブ・ライフquality of life=QOL(生活の質)の向上を目ざしている。

 これとは別に、児童・生徒の健康の保持増進を図るために、学校における感染症予防に関する規定が定められ、「学校感染症」という名称のもとにまとめられている疾病がある。

 なお学校保健法は、2009年(平成21)に「学校保健安全法」に改称され、学校環境衛生基準の法制化、保健指導の充実、地域医療機関等との連携等が規定されるとともに、学校安全に関する規定が新たに盛り込まれた。

[井上義朗]

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