子どものホルモンの病気の特徴と対策(読み)こどものほるもんのびょうきのとくちょうとたいさく

家庭医学館 の解説

こどものほるもんのびょうきのとくちょうとたいさく【子どものホルモンの病気の特徴と対策】

 ホルモンは、成人では、おもに代謝(たいしゃ)作用の調節を通して、からだの恒常性(こうじょうせい)を維持するためにはたらいています。しかし、子どもでは各器官の形成とからだの成長・成熟のためにも重要なはたらきをします。
 したがって、子どものホルモンの病気は、こうした「からだをつくる」過程の異常として現われることに大きな特徴があります。
器官形成に異常をおこすホルモンの病気
 胎児期(たいじき)にはさまざまの器官が形成されますが、そのなかでホルモンは、性器の形成についてもっとも主要な役割をはたしています。
 胎児の性器はそのままだと女性型になっていきますが、正常な男子では、精巣(せいそう)から分泌(ぶんぴつ)される男性ホルモンによって、男性内性器(ないせいき)(この場合は精巣上体(せいそうじょうたい)と輸精管(ゆせいかん)をさします)が誘導され、男性外陰部が形成されていきます。すなわち、陰嚢(いんのう)が形成され(女性の陰唇(いんしん)にあたるものが癒合(ゆごう)してできます)、腟(ちつ)が退縮し、陰茎いんけい)(女性の陰核(いんかく)にあたるものが肥大)が形成されます。
 もし、男性ホルモンがまったく分泌されないと、外陰部は完全女性型になります。そうした病気には、先天性副腎皮質過形成症(せんてんせいふくじんひしつかけいせいしょう)の1つの病型(リポイド過形成症)があてはまります。
 また、男性ホルモンは十分に分泌されても、受容体に異常があってホルモンの作用が発揮されない病気でも、まったく同様の性器の異常が現われます。これを精巣女性化症候群(せいそうじょせいかしょうこうぐん)といいます。
 精巣をもちながら、精巣からの男性ホルモンの分泌が量的に不足していた場合には、外陰部は小陰茎(しょういんけい)や二分陰嚢(にぶんいんのう)となり、男性化が不十分(男性仮性半陰陽(だんせいかせいはんいんよう))となります。原因としては先天性の性腺機能不全(せいせんきのうふぜん)などが考えられます。
 一方、女子でも、胎児期に男性ホルモンが過剰に分泌されると、外陰部が男性化します。これを女性仮性半陰陽といいます。その原因としてもっとも多いのは、21水酸化酵素欠損症(すいさんかこうそけっそんしょう)と呼ばれる、先天性副腎皮質過形成症の1つの病型です。
 このように、胎児期からの性ホルモンの異常の病気は、生まれたときに外陰部の異常として見つけられることが多いのです。
●成長(身長増加)に異常をおこすホルモンの病気
 子どものからだの最大の特徴は成長することです。背が伸びるのはおもに骨が成長するためですが、その骨の成長を支配しているのもホルモンです。
 子どもの成長のどの時期にも欠かせないホルモンは、成長ホルモンと甲状腺(こうじょうせん)ホルモンで、どちらが欠けても背の伸びは悪くなり、成長障害を生じます。
 成長障害とは、背の伸びる速さが異常に遅くなる場合(たとえば、小学校1年生で、1年間に3cmしか伸びない場合)と、低身長の場合(性別・年齢別にみた身長の基準値に比べて低い場合)の2つを合わせてそう呼びます。
 成長障害をきたす病気を早期発見するためには、「成長がおかしいかな」と思ったら、成長曲線(せいちょうきょくせん)を描いてみることです。
 図「成長曲線の比較例(男子)」に示したような標準成長曲線の図に、何歳何か月に何cmであったかを正確に点で記入していき、線でつないでみます。標準成長曲線のいちばん下の線を下まわっていたり、伸びが悪くて横軸に平行になるようなら成長障害の疑いがあります。小児内分泌科の専門医に診(み)てもらうことをお勧めします。
●性発達に異常をおこすホルモンの病気
 二次性徴(にじせいちょう)は性ホルモンの分泌の増加によって始まり、進行します。それが始まる年齢が早すぎる病気が思春期早発症(ししゅんきそうはつしょう)で、遅い場合は思春期遅発症(ちはつしょう)です。さらに、いっこうに二次性徴が出現しないのは性腺機能低下症(せいせんきのうていかしょう)(「性腺機能低下症」)です。
 思春期早発症では、二次性徴にともなって骨の成長と成熟が促進されますから、成長スパートが早く現われます。したがって、成長曲線を描いてみると、早い時期から急に線が立ち上がることでも異常に気づかれます。
 以上のように、子どものホルモンの病気は性分化の異常、成長や性発達の異常というように、正常の発達の過程からはずれることによって発症するものが多いのです。
 いずれもゆっくりした経過をたどるため、なかなか異常に気づきにくいので、注意が必要です。
 そのほか、子どものホルモンの病気のなかには、一般にはおとなの病気と思われていても子どもにもおこるものがあります。糖尿病、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)(とくに思春期の女子に多い)、尿崩症(にょうほうしょう)(どの年齢でもみられる)などがそうです。
 これらは、それぞれ特徴的な症状があるために早く発見されるはずです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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