子どものかぜ症候群(読み)こどものかぜしょうこうぐん(英語表記)Common Cold Syndrome in Childhood

家庭医学館 「子どものかぜ症候群」の解説

こどものかぜしょうこうぐん【子どものかぜ症候群 Common Cold Syndrome in Childhood】

[どんな病気か]
 急性の鼻やのどの炎症で、上気道炎(じょうきどうえん)ともいわれ、子どもにもっとも多い病気です。
 原因の9割ほどはウイルスの感染によるもので、その約3分の1がライノウイルス、約1割がコロナウイルス、残りがそのほかの多くの種類のウイルス感染によっておこります。原因の1割ほどは細菌の感染によっておこります。マイコプラズマや溶血性(ようけつせい)レンサ球菌(きゅうきん)がおもな感染細菌です。インフルエンザウイルス以外の病原微生物の感染によるかぜを普通感冒(ふつうかんぼう)といいます。
[症状]
 症状は鼻水せきのほかに、乳児では発熱がおもにみられます。乳幼児では、突然に発熱して不機嫌になり、くしゃみが出たりします。その数時間後には、鼻水が出たり、鼻がつまったりして息がしにくくなり、口で息をしたりします。ときには、吐(は)いたり下痢げり)をする場合もあります。
 少し年齢が上の子どもでは、鼻やのどの違和感や痛みで始まり、寒けがしたり鼻水やせき、頭痛や食欲不振などが現われてきます。小学生にもなると、熱が出ないことが多くなります。ほとんどの場合、発熱などの急性の症状は、2~4日で治ります。
 いろいろな病気をともなうことがあり、代表的なものは、中耳炎(ちゅうじえん)、副鼻腔炎(ふくびくうえん)、気管支炎(きかんしえん)、肺炎(はいえん)などです。
 3日以上の発熱、呼吸が非常に苦しそうだ、とても機嫌が悪い、ぐったりしている、というような場合は、早く受診すべきです。比較的元気で、食欲もまずまずある状態なら、2~3日ようすをみてもよいでしょう。
[治療]
 安静がたいせつです。水分はほしがるだけ、食物は少しひかえめに与えるようにします。冬は乾燥して、よけいに鼻やのどを痛めるため、適当に加湿したり、マスクをするのもよいでしょう。
 発熱は、病原体をやっつけるためにおこります。解熱薬(げねつやく)はそのはたらきを弱めますから、できるだけ使わないほうがいいのです。解熱薬は、けっして病気を治すものではなく、かえって病気を長びかせたり、副作用が出ることもあります。多少楽にするだけの薬と考えてください。
 また、案外と知られていないのですが、解熱薬はどれでも鎮痛薬(ちんつうやく)になることです。どこかひどく痛そうな場合には熱がなくても使うことはできます。
 かぜによる鼻汁(びじゅう)は、止める薬もないし、止めること自体もよくないですから、かむか、ふきとるぐらいにしてください。抗ヒスタミン薬は、かぜの鼻水には効きません。赤ちゃんが鼻がつまってミルクが飲めないような場合には、鼻の粘膜を収縮させて鼻づまりをとる点鼻薬がありますから、1日数回にかぎって使用できます。
 せきも、気管支や肺を、たんや病原体から守るためにおこるものですから、せきがひどくて、吐いたり、眠れないなど、苦痛がひどい場合だけ、せき止めを使います。
 抗生物質は、かぜそのものをよくすることはできません。また、中耳炎(ちゅうじえん)、肺炎(はいえん)などの合併症を予防することもできません。このことは、厳密な研究で、くり返し証明されています。
 ふしぎに思われますが、抗生物質は、からだを守っている細菌をも抑えるため、かえって抵抗力が弱まるのだろうと考えられます。もし、合併症がおこってきたら、早く見つけて治療するのが、もっともよい方法です。
 溶血性(ようけつせい)レンサ球菌(きゅうきん)に感染すると、のどが赤くなるなど、特有の症状が出ます。菌の検査で陽性なら、最低10日間は抗生物質を飲みます。マイコプラズマに対しては、肺炎になれば、マクロライド系やテトラサイクリン系など、ふつうの細菌にはあまり使わない抗生物質が効きます。しかし、かぜ症候群に効くかどうかはわかっていません。

出典 小学館家庭医学館について 情報