マスク(読み)ますく(英語表記)mask

翻訳|mask

精選版 日本国語大辞典 「マスク」の意味・読み・例文・類語

マスク

〘名〙 (mask)
① 面。仮面。
※青年(1910‐11)〈森鴎外〉一五「青み掛かって白い、希臘風に正しいとでも云ひたいやうな奥さんの顔は、殆ど masque(マスク)である。仮面である」
② 病菌の侵入・放出やほこりなどを防ぐために鼻・口をおおうガーゼ製の衛生具。《季・冬》
※東京灰燼記(1923)〈大曲駒村〉一三「死体の腐爛した臭ひが鼻をついて、マスクでもしなければとても歩けぬ」
③ 野球の捕手・球審や、フェンシングの選手などが顔面につける防具。〔新式ベースボール術(1898)〕
④ 毒ガスなどから呼吸器を守るために顔面につける用具。ガスマスク
※今年竹(1919‐27)〈里見弴〉二夫婦「よろしく毒瓦斯よけの面(マスク)を被るべしだね」
⑤ 石膏(せっこう)などで作る死者の顔面像。デスマスク
※カーライル博物館(1905)〈夏目漱石〉「彼が往生した時に取ったといふ漆喰製の面型(マスク)
⑥ 顔。容貌。
※放送ばなし(1946)〈和田信賢〉「はなし」の終ひに「マスクと肢体に、生命がありそうな、舞台女優に於てすら斯様である」
⑦ 映画、写真などで、印画紙の周辺や不要な部分を覆う、遮光のための枠や覆い。

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デジタル大辞泉 「マスク」の意味・読み・例文・類語

マスク(mask)

面。仮面。
鼻・口を覆う不織布ガーゼ製などの衛生用具。 冬》「口紅のなじみし―かくるなり/万太郎
野球の捕手球審フェンシングの選手などが顔面につける防具。
ガスマスク。防毒面。
顔だち。容貌。「甘いマスク
映画や写真で、撮影・焼き付け引き伸ばしのとき、遮光のために付ける不透明な枠や覆い。印画紙の周辺や不要部分に用いる。
マスキング

マスク(musk)

《「マスク」とも》麝香じゃこう

マスク(Masuku)

ガボン東部の都市フランスビルの旧称。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マスク」の意味・わかりやすい解説

マスク
ますく
mask

人間の顔面の全体に被るもの、または鼻と口などの顔の一部を覆うものをさす。衛生、感染対策、防具、面、仮面と用途は多岐にわたり、さまざまな目的で使用される。

 衛生では、空気中に浮遊する有害な微小粒子(花粉、大気汚染物質、細菌、ウイルス、塵(ちり)や埃(ほこり))の曝露(ばくろ)や吸入を防ぎ、呼吸器や粘膜を保護する役割をもつ。感染対策としては、衛生目的と同様に吸入防止に加え、感染力のあるウイルスや細菌を含む飛沫(ひまつ)拡散の遮断、のどの保湿や保温効果による感染不成立を導くことに役だつ。このほか、顔を隠すための仮面や覆面として使用されるもの、野球やフェンシングなどの顔面防具もマスクとよばれる。

 以下本稿では、おもに衛生や感染対策を目的としたマスクについて述べる。

[大西一成 2021年12月14日]

マスクのさまざまな名称

マスクの名称は、用いられる素材、製造過程や用途によって、布マスク、手作りマスク、ガーゼマスク、ウレタンマスク、スポーツマスク、衛生マスクなどと変化するが、いずれも慣例や便宜上の呼称であり、正規名称というものはない(規格が定められているわけではない)。一般的に家庭用として普及している衛生マスクは、サージカルマスク、不織布マスクとよばれ、エチケット用途に用いる意味合いが強い。

 一方、規格が厳格に定められたマスクもある。その一つである「防じんマスク」は、国家検定規格に合格したマスクのことをいい、産業現場の防塵(じん)対策、医療現場の感染対策に用いられる。防じんマスクでも不織布を使用しているものは、広義には不織布マスクである。衛生用途においても、この国家検定規格に合格したマスクかどうかの区別が重要となる(国家検定規格に合格していないマスクには「防じんマスク」の名称を用いることはできない)。

 マスクは、呼吸用保護具ともいい、とくに電動ファン付きフィルター取替式呼吸用保護具のことをPAPR(powered air purifying respirator)という。電動ファンによりマスク内が陽圧に保たれるため、顔面とマスクに隙間(すきま)があっても、着用者の顔の形状や着け方にかかわらず、有害粒子や有害外気の吸入を抑制することができる。また、「防毒マスク」「防じん機能付き防毒マスク」も、厚生労働省の国家検定規格で必要な性能と構造が定められている。「有毒ガス用電動ファン付き呼吸用保護具」は、国家検定規格がなく、JIS規格に準じた性能と構造で製造されている。

 このほかに、機能や装着方法に着目したマスクの呼称もある。

 「弁付きマスク」は、呼吸をしやすくするため一定方向に呼気の流れを解放したもので、マスクの面体に弁がついたものである。その一つは、吸気がフィルターを通過することできれいな状態で吸い込まれ、呼気はそのままマスクの外に排出されるマスクで、もう一つは、感染者が飛沫を拡散させないように、呼気はフィルターを通して排出されるが、吸気は弁でそのまま通すマスクであり、それぞれ相反する効果をもたらすもので、どちらも一方向目的しか達成できないため、とくに感染対策では、使用者の目的に応じて弁の方向に注意する必要がある。

 「二重マスク」は、一般向けマスクを意識的に2枚重ねて着用し、感染対策効果の向上をイメージした装着方法の一つである。ただし実際の衛生上の効果はきわめて限定的で、上から押さえたマスクが、下のマスクをゆがめてしわができてしまい、逆に顔とマスクの間に隙間ができてフィット性が破綻(はたん)してしまうことや、厚くなったフィルター部分を呼気が通りにくくなるがゆえに、顔との隙間からより呼気が漏れやすくなるという点に注意を払わなければならない。加えて、マスクの間に不織布フィルターや布などを挟んだ着用も呼気の通り道をふさぐことになる場合がある。

 「鼻出しマスク」は、口部のみを覆い鼻が出ている状態での着用を示す。マスク着用により息が苦しくなり意図的にマスクを下げる場合や、布マスクやゴム紐(ひも)のゆるみなどでマスクが下にずり落ち、顔にフィットしていない状態のことである。鼻出しマスクでは、衛生上のマスクの効果は発揮されない。

 「顎(あご)マスク」は、飲食や顔認証のために一時的にマスクを外す際に行われることが多い。マスクを顎まで下げることで紐が伸びてしまい、戻した際にフィットの破綻が起こる。また、顎部分が汚染している場合は、マスクの口接触面へ汚染が遷移するため、衛生上推奨されない。

 「濡れマスク」は、意図的にマスク自体を濡らして使用したり、マスクの間に濡れたガーゼなどを挟む着用方法である。かつて厚生労働省が花粉症の対策として推奨した時期がある。水分の分子間力による粉塵の吸着をイメージしたものであるが、実際はマスクフィルターの隙間を水分が埋めてしまい、呼気を通さないため息苦しくなり、顔とマスクの隙間から呼気が漏れるようになる。

[大西一成 2021年12月14日]

保管期間と使用時間

マスクには、保管期間と使用時間、破過時間――防毒マスクにおいては、防毒マスクの吸収缶に、一定濃度の有毒ガスを連続して通気した際、通気の開始から破過(有毒ガスが吸収缶を通過する)までの時間――が定められているのが一般的である。「使い捨てマスク」はマスクそのものを使い捨てにするもので、「フィルター取替式マスク」はフィルター部のみを使い捨て、本体は再利用するものである。マスクの微小粒子捕集部の除染・洗浄は非常に困難であるため、フィルター部は使い捨てが原則となり、厚生労働省の通達では、「使用限度時間を経過したものは廃棄」「形状等の変化したものは交換」としている。そのためマスクフィルター部の再使用は原則推奨されないが、パンデミック下のマスク供給不足時の感染対策においては、特例として滅菌や長時間放置によるウイルス死滅後の再使用が、医療施設の判断で運用されることがある。この場合の判断基準として、厚生労働省が取りまとめた通達「N95マスクの例外的取扱いについて」がある。マスクは、通常の洗濯では微小粒子の除去は困難で、劣化やフィット破綻、ゴミの付着など、初期使用時以降は効果が低減することを念頭に置いたうえで使用する必要がある。

 なお、マスクケースは、一時的にマスクを保管したり、予備のマスクを保管しておくケースで、衛生的にマスクを保管したり持ち運んだりすることを目的としたものである。使用中のマスクの保管は、ケース内を汚染したり、マスクの口接触部を汚染させたりするため、ケースの使用にあたっては滅菌操作に準じたくふうをしたほうがよい。

[大西一成 2021年12月14日]

日本におけるマスクの誕生と変遷

日本では、鉱山病(塵肺)対策のために手拭(てぬぐい)で口や鼻を覆っていたが、江戸時代末期には石見(いわみ)銀山(島根県)で絹の間に梅肉を挟んだものに紐をつけて耳にかける「福面」が使われていたことを示す襖絵(ふすまえ)が残っている。

 明治時代になると、手術時の清潔野の細菌飛沫による汚染防止のために外科医がマスクを使用するようになり、後にサージカル(外科の)マスクとよばれるようになった。時の経過とともにこのマスクは、感染者が飛沫拡散させないように着用するという意味合いが強くなる。

 1918年(大正7)にはスペインかぜが流行し、アメリカで感染予防を目的としたマスクの着用を義務づける「マスク令」が発令された。日本では、1919年2月に感染予防法として健常者がマスクを着用することが推奨され始め、1920年には、感染者が咳(せき)やくしゃみをするときに口を覆うようなエチケットではなく、感冒予防のための健常者のマスク着用が大々的に啓発された。時は流れ、ワクチン等の開発によりマスク着用は下火になった。

 日本では、花粉症やインフルエンザ、PM2.5に分類される大気汚染物質や麻疹(ましん)の流行などで、そのつどマスクが注目され、医療で使用されているマスクは効果が高いとするイメージ宣伝から、サージカルマスク(不織布マスク)が飛沫拡散予防の意味ではなく感染予防のために使用され普及し、主流となっていった。

 2019年(令和1)12月からの新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行ではマスク不足となり、手づくりが可能なガーゼマスク、布マスクが普及した。不織布マスクとも共存したが、感染者数は一向に減らなかった。COVID-19流行下においては、この種のマスクに防塵(感染予防)効果はないが、人に感染させない=拡散させないためには意味がある(エチケット)といった極論が多く語られた。マスクのエチケット用途は副次的効果であり、マスクはその環境に応じて正しく選択し、正しく着用してこそ防塵(感染予防)効果が発揮され、おのずとエチケットの目的も達成できるのである。感染予防には役だたないとするこのような論調は、どのマスクをさしているものか明らかでなく、マスクの選択と正しい着用によって感染対策を行う本来の原理や運用に対する正しい理解を、メディアや一般使用者から遠ざけた。

[大西一成 2021年12月14日]

衛生用途のマスク

衛生用途で使用されるマスクは、医療用マスク、家庭用マスク、産業用マスクと区別されることがあるが、実際の使用者のマスク用途が効果に一致していない現状がある。本来、マスクは目的と防ぎたいもの(物質)によって種類を選択し、状況や環境に応じて適切に使い分ける必要がある。衛生用途すなわち防塵・防毒や感染対策においては、ただ着用するだけで完全に効果を発揮できるマスクはない。防護具としての扱いを遵守し、防ぎたいものによってマスクを選び、その着用方法や扱い方を訓練して運用しなければ効果を発揮することはできないという前提がある。すなわち、固体や液体からなる粉体(花粉、粉塵、細菌、ウイルスなど)を防ぐ場合は「防じんマスク」、気体(毒ガス、ホルムアルデヒド、一酸化炭素など)を防ぐ場合は「防毒マスク」を選択しなければならない。

 衛生用途では、防ぎたい対象物が(A)マスクのフィルターを通らないこと、(B)マスクと顔の隙間から出入りしないこと、を同時に達成する必要がある。とくに顔骨格は個人によって異なるため、(B)の達成は困難になりやすく、フィットテストやフィットチェックによってフィットファクター(防護係数)や漏れ率を調べたうえで、自分の顔にあうマスクを正しく着用しなければならない。また(A)の達成のためには、呼気を通し対象物を捕集する機能を有するフィルターを使用しなければならない。そのため、織布よりもフィルター自体の隙間が小さい不織布が用いられることが多い。しかし、フィルターの性能が高すぎると、呼気がフィルターを通過しないため、衛生用途のマスク効果を発揮することはできない。

 感染対策においては、マスク自体の抗菌性や抗ウイルス性をうたったものであっても、感染力のあるウイルスがフィルターを通過したり、顔とマスクの隙間から入ったりすれば感染は成立する。マスク自体の衛生保持と着用時の感染予防は別個に判断してマスクを選択し、使用する必要がある。感染対策においては、感染成立の3要素(病原体の存在、感染経路、宿主の感受性)のうち感染経路の遮断による感染不成立に貢献できるマスクでなければならない。

[大西一成 2021年12月14日]

規格と性能

日本で販売される一般向けの衛生マスクフィルターの機能は、アメリカASTMインターナショナルの医療用マスク規格試験のうちPFE(微粒子濾過(ろか)捕集効率)とBFE(細菌濾過捕集効率)が準用されることが多い。また、日本の一部のマスク製造メーカーは、フィルター性能を試験する検査機関にて追加試験を行い、VFE(ウイルス濾過捕集効率)や花粉遮断捕集効率についての情報をマスクのパッケージ等に記載していることもある。これらの準用を背景として、厚生労働省、経済産業省、日本衛生材料工業連合会は、JIS T9001(医療用マスク、一般用マスク)、JIS T9002(感染対策医療用マスク)の「性能要件及び試験方法」を2021年6月に制定し、日本規格協会から試験方法の規格が発行された。

 ただしこれらの規格はフィルターそのものの性能を保証しただけで、マスク着用時のフィットの性能とは別の次元の評価値であり、着用時の防護効果を示しているわけではない。

 フィルター性能試験の有無によって粗悪品との区別ができる一方で、全世界共通のフィルター試験や合格基準があるわけではないため、輸入品などにおいては「合格」と記載があっても、期待通りの試験結果や効果を示したものではない場合がある。また、日本の全国マスク工業会のマークや規格は、広告表示自主基準であり、フィルター機能やフィット性能が保証されたものに付記されているわけではない。

 前述の通り、「防じんマスク」は国家検定規格に合格したマスクのことをさす。「使い捨て防じんマスク」としてはN95(アメリカ)、DS2(日本)が該当し、これらは同等の規格として扱われる。また、KN95(中国)、KF94(韓国)、FFP2(ヨーロッパ)も類似の規格としてあげられることがある。なかでもN95マスクは、規格のマニュアル上は0.3マイクロメートル(μm)以上(空力学的質量径で0.055~0.095μm)の微小粒子を流量85L/分で95%以上カットすると記載されているが、実際の粒子捕集効率はさらに高く、通常の呼吸流量では0.1μm以上の粒子をほぼ100%通過させない仕様となっている。しかし、これらの国家規格についてもマスク自体の性能を試験しているだけにすぎず、着用状況のフィットを保証したものではないため、使用者の意図しない結果をもたらすことがある。

 なお、「フィルター取替え式防じんマスク」では、面体と濾過材に、国家検定合格標章(証紙)が貼られている。

 前述の(B)に関連する、マスクのフィット性能に関する規格は、フィットファクター(防護係数)、漏れ率で表され、アメリカではOSHA(国際安全衛生センター)やISO(国際標準化機構)で合格基準が定められている。感染リスクの高い医療現場や粉塵曝露のある作業現場に入る際には、自分の顔でフィットテストに合格したマスクを使用しなければならない。日本では、2021年5月にJIS T8150(呼吸用保護具の選択、使用及び保守管理方法)が改正され、産業現場における溶接ヒューム曝露対策において、ISOに整合したフィットテスト手順が規定された。これにより、今後、産業現場や医療現場においてフィットテスト実施の義務化が加速していくことが考えられる。

 マスクの密閉性と息苦しさは、一得一失である。防塵効果の高いマスクでは息苦しさや暑さが課題になっていたが、電動ファン付きフィルター取替式呼吸用保護具に呼吸追随機能(呼吸にあわせてファンの回転が調整され送風量が調整される)が搭載された「呼吸追随式電動ファン付き呼吸用保護具」の登場によって、きわめて高い防護機能と呼吸のしやすさが両立でき改善されている。

 なお、「防じんマスク」ではない不織布の衛生マスクであっても、フィルター性能が高く、顔にフィットすれば十分なフィットファクターを得ることができる場合がある。この点において、マスク自体の性能、フィット性能、使用者の顔のサイズや皮膚の感触、骨格要素、使用目的、着用環境が合致しなければ効果は発揮されず、この因子の組合せは無数にあるといえる。このような特性から、マスクは過大評価も過小評価もできず、一様に特定のマスクの効果を述べることはむずかしい。

 眼鏡が曇らないマスク、香るマスク、ファッション性の高いマスクなどが注目されたこともあるが、一つの機能をとるともう一つの機能がたたなくなるということがマスク科学では起こる。布マスクやウレタンマスク、衛生マスクは、もともと防塵用や感染対策用のマスクではない。まったくつけていない状況と比較すると、つばや鼻水など大きな飛沫のカットや接触感染予防に貢献する部分もあるが、微小粉塵の吸入防止やマイクロ飛沫感染・空気感染対策に用いるには適当でなく、十分な予防効果を得ることはできないため、効果の過大評価をしてはならない。

 マスクは、顔を上下・左右に動かす、お辞儀する、話すといった動作で着用フィットが破綻することが知られている。感染対策では、一つだけの対策に頼るとその対策が破綻した際に感染が成立してしまうため、マスクは一つのツールとしてとらえ、手洗い、うがい、ソーシャルディスタンシング、ワクチン接種等とあわせて同時に複数の対策を行わなければならない。

[大西一成 2021年12月14日]

『堀井光俊著『マスクと日本人』(2012・秀明出版会)』『大西一成著『マスクの品格』(2019・幻冬舎)』

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改訂新版 世界大百科事典 「マスク」の意味・わかりやすい解説

マスク
mask

顔にかぶるものをいい,仮面,面,衛生上の目的で用いられるマスク,野球やフェンシングで用いられる防具,水中マスクなどいろいろなものを含み,また顔つきなどを意味することもあるが,ここでは衛生上のマスクについて述べる。

 衛生上のマスクには,主として呼吸器感染症などに際して日常ふつうに用いられるものと,浮遊粉塵などの多い環境下での作業に際して用いられる産業用とがある。前者はガーゼまたは木綿でつくられ,くしゃみや咳,あるいは談話の際に唾液や痰が飛散するのを防いだり,低温,低湿の空気を加温,加湿して刺激を和らげて感染を防いだり,症状の悪化を防ぐ目的で用いられる。ふつう,マスクの内側にガーゼを折りたたんで用いるが,呼吸が阻害されない程度のガーゼの重ね方では,細菌やウイルスをはじめ,浮遊粉塵など,直径5μm以下の粒子は侵入,放散を阻止できない。

 日本に浸透したのはスペイン風邪の流行した1919年以降で,当時はガーゼ,さらし木綿のほか,黒ビロードやサテンの表地で芯地の入ったものも使われていた。食品工場や精密機械工場など,清潔が要求される職場ではマスクが用いられている。また,外科医の手術用マスクのように,とくに細菌の遮断効果が要求されるものでは,不織布の中にフィルターとしてグラスウールと活性炭を入れた3層構造のものが使用されている。

 産業用のマスクは,作業現場に浮遊する粉塵や有毒ガス,煙,酸欠空気などを吸収することによる人体への有害な作用を防ぐ目的で用いられる。これには,防塵マスク(ろ過器をマスクに直結した直接式と,別の装置でろ過してホースで導く隔離式とがある),送気マスク(ホースマスクともいい,供給源から空気をホースでマスクに送気する形式のもの),防毒マスクなどがある。これらはJISによって構造や機能が規定されている。
仮面 →デスマスク
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マスク」の意味・わかりやすい解説

マスク
Masuku

旧称フランスビル Franceville。ガボン南東部の町。オーオゴウェ州の州都。モアンダ東南東約 40km,オゴウェ川沿岸に位置。 1880年ド・ブラザが建設。モアンダのマンガン鉱,ムーナナのウラン鉱からの輸出ルートであるトランスガボネ鉄道によってオウェンド港と結ばれている。人口7万 5000 (1988推計) 。

マスク

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百科事典マイペディア 「マスク」の意味・わかりやすい解説

マスク

ガボンの南東部の町。オゴウェ川の東岸に位置する。1880年にフランス人によって建設された町で,フランスビルとも呼ばれる。マンガン,金鉱山地帯の中心で,近くでウラン鉱も開発されている。またコーヒーが,この地域の主要商品作物になっている。人口3万1183人(1993)。

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デジタル大辞泉プラス 「マスク」の解説

マスク

1985年製作のアメリカ映画。原題《Mask》。監督:ピーター・ボグダノビッチ、出演:エリック・ストルツ、シェール、サム・エリオットほか。第58回米国アカデミー賞メイクアップ賞受賞。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「マスク」の解説

マスク

マスキング」のページをご覧ください。

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