姥・祖母・乳母(読み)うば

精選版 日本国語大辞典 「姥・祖母・乳母」の意味・読み・例文・類語

うば【姥・祖母・乳母】

〘名〙
① (姥) 年老いた女。老婆。嫗(おうな)
※千種本住吉(1221頃か)「うばがあににかぞへのかみと申すものの候ふ。七十にあまり候ふおきなの」
② (姥) 能面の一つ。老女の顔をかたどったもの。「卒都婆小町(そとばこまち)」「接待」などのシテ、「高砂」「嵐山」などのツレに用いる。老人を表わす尉(じょう)に対するもの。
③ (祖母) 両親の母親。おおば。ばば。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「かかれど、おほぢ、うば〈略〉吹上の浜のわたりに、広く面白き所を選び求めて」
④ (乳母) 母親にかわって子供に乳を与え、その世話をする女。ちおも。めのと。おんば。
※古今著聞集(1254)一五「をさなき心にあさましくなげきて、うばにともすればうれへ怠状しけれども、猶ゆるさず」
⑤ 年とった未婚婦女近世初期の人別改帳などでいう。おば。
※美濃国神海村寛永二十年家付覚(1643)「弐家は 目たたき、三家は うば」
[語誌](1)九世紀に、③④について「オオバ」が見られるが、それが「オバ」を経て「ウバ」になったとみられる。「乳母」の意に用いることが多くなったのは一三世紀以降、特に一七世紀末である。以後、次第に「ウバ」は「乳母」の意に偏り、「祖母」「老婆」の意味を排除するようになったものと考えられる。なお、上代に乳母を意味する語は「チオモ」である。
(2)近世では、乳母を意味する主要な語としては、「ウバ」のほかに「オチ(ノヒト)」がある。

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