太郎坊山(読み)たろうぼうやま

日本歴史地名大系 「太郎坊山」の解説

太郎坊山
たろうぼうやま

標高三四四メートル。山腹に巨大な岩石の露頭が数多くあって円錐形の印象的な山容をもつことから、古くから神体山として崇められ、山麓の天台宗成願寺によって祀られてきた。赤神あかがみ山ともよばれる。赤は丹朱を意味し、この色彩に神秘な霊力を認め赤神として祀ったとも、露頭する岩石を磐座として祭祀の対象としていたとも考えられるが、祭祀の年代は不詳。山名の太郎坊は修験道の天狗信仰にちなむ名であり、中腹に露頭する男岩・女岩(夫婦岩)を金剛界・胎蔵界の大日如来になぞらえ、そこに不動明王を祀るという成願寺山伏の唱導が伝えられる(「輿地志略」など)。成願寺の鎮守熊野権現で、天文一六年二月二〇日の前掲権現講先達出銭注文によれば、同寺石垣坊に熊野権現講が結成されており、成願寺山伏が太郎坊山で修行するとともに、太郎坊山周辺村々の講衆を紀伊熊野三山へ先達として案内していたものと推定される。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報