産土神(読み)うぶすながみ

精選版 日本国語大辞典 「産土神」の意味・読み・例文・類語

うぶすな‐がみ【産土神】

〘名〙 生まれた土地守護神近世以降は氏神と混同されている。鎮守神。うぶしな。うぶすな。うぶのかみ。うぶがみ。〔随筆貞丈雑記(1784頃)〕

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デジタル大辞泉 「産土神」の意味・読み・例文・類語

うぶすな‐がみ【産土神】

生まれた土地の守り神。近世以降は氏神鎮守神と混同されるようになった。うぶがみ。うぶのかみ。うぶすなのかみ。

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改訂新版 世界大百科事典 「産土神」の意味・わかりやすい解説

産土神 (うぶすながみ)

生まれた土地の守護神。産土の神または単に産土ともいう。産土とは人の出生地の意味で,先祖伝来もしくは自分の生地を出自意識をもって表現する言葉であり,したがってその土地の鎮守社またはその祭神を自分の出自との関係で生まれながらの守護神と信じて,これを産土の神,産土神と称する。とくに近世以来これを氏神と混同するようになったが,それは氏神が当時,族縁神に限らず広く地縁神として土地の鎮守をもいうようになったことによる。文献に見えるウブスナの表記には,本居,宇夫須那,生土,産土,産須那などが多く,他は近世における語義解釈で案出されたものが多い。本居をウブスナと訓ずるのは,《日本書紀》推古32年(624)10月の条に〈葛城県者元臣之本居也〉とあって,北野本,岩崎本の訓ずるところによる。産土の語義としては,《塵袋》や《塵添壒囊(じんてんあいのう)抄》に風土記逸文一節〈尾州葉栗郡若栗郷宇夫須那社アリ。廬入姫誕生産屋地也。故此号アリ〉を引用し,当時は所生の所の神をウブスナといい,本居,産土,宇夫須那などと書くとしている。《貞丈雑記》巻十六には,〈本居はもとのをりところにて,産れたる処を云ふ。うぶは産なり,すなはち土なり〉とあり,また《倭訓栞》には,〈推古紀に本居をよめり。産出の義なるべし。邑里の名にいふも,名ある人の出でたる所をよべり。その義風土記などに見えたり〉とある。産土神信仰を重視した平田派国学者には,この語を神学的に解釈する者が多い。六人部是香が産須那を産為根(うぶすね)として万物を産む根本の意に解し(《産須那社古伝抄広義》),また佐野経彦が,産為根はウブスニという語がウヂ(氏)という語に約したものと同義で,産土神は氏神のことだと説いている(《宇夫須那神考》)。そのほかに,産砂とあて梅宮神社の砂を出産の守りとするところから出たとする解釈(《神道名目類聚抄》)や,〈産住場(うぶすにわ)にて,産出てやがて住場なればにや〉(《神祇称号考》)とするものもある。ウブの語義ではすべての解釈が一致して〈産〉〈生〉の意としているが,スナまたはナについては諸説がある。多くは,ナは名であり,名は生,成,為であって(《倭訓栞》《古事記伝》),〈其住着ける地を名といへり〉(《書紀伝》巻二)とし,とくに邑里といった地縁集団の位置する比較的狭い土地を指す意味にとっている。すなわち産土神は,ウブスナなる所生の土地にまつられた神として祖先または自分を含めた郷党社会を守護する神社ないし神格をいうのである。なお平安末期より〈産神〉の語が《今昔物語集》などに見え,室町時代には〈産神〉〈氏神〉ともにウブスナと読むことがあり,近世には産神を奉じる者を〈産子(うぶこ)〉と呼ぶにいたる。産土神(産神)と産子の関係は語義の上からもおのずと子供の出生に関連し,近世には初宮参りや一般の氏神参りを〈産土参(うぶすなまいり)〉と称したことも多い。

 また近世の神道思想には,産土神を幽世(かくりよ)の神とする神学的試みも目だつ。すなわち産土神は氏子を守護し,その死後の霊魂に対して生前の善悪を裁く場に導いたり,祖霊と協力して郷土と氏子を守護するという説である。この説は神代紀に示された幽冥神としての大国主命と結びつけられ,各地の産土神が毎年10月(神無月)に出雲大社に報告のため神集うとの神在月(かみありづき)の信仰と結合して広く普及した。こうして氏神,鎮守の信仰とほとんど同一視されるにいたった産土神の信仰は,家郷的な社会生活において住民奉斎の中心となったが,明治維新後は氏子制度が整備されたこともあって,公的には産土神ではなく氏神のほうが一般化している。
氏神 →氏子
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百科事典マイペディア 「産土神」の意味・わかりやすい解説

産土神【うぶすながみ】

生まれた土地の神。中世以後,生児は初宮参りさせ,氏子入りの承認を受けた。また誕生日,七五三などに産土詣(もうで)をし,旅立ちには暇乞い(いとまごい)をする。もとは氏神とは異なる地縁の神であるが,同族結合のうすれるに及んで両者は混用され,ともに村の守護神とされた。
→関連項目国津神祭神神社鎮守神平野郷

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「産土神」の解説

産土神
うぶすながみ

自分が生まれた土地の神。ウブスナは本居などとも表記され,自己の生地を出自意識において表現する語である。生産を意味する他動詞ウムスと同源のウブスに土地の意のナが結合したものか。生地との紐帯の強さから,産土神は一生の守護神と信じられた。「延喜式」では尾張国に宇夫須那神社がみえる。中世以降しだいに氏神(うじがみ)の語が血縁集団から地縁集団の守護神をも意味するようになり,氏神との混淆が生じた。近世,初宮参りや一般の氏神参りを産土参り(産神(うぶがみ)詣とも)というに至る。この信仰は平田派国学に重視された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「産土神」の解説

産土神
うぶすながみ

人の生まれた土地の守護神
ウブスは生産,ナは土地の意味。本来は地縁的集団を守護する神で,氏神・鎮守神とは異なる。地縁的・共同体意識の発達した中世以降,氏神と同一視された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「産土神」の意味・わかりやすい解説

産土神
うぶすながみ

氏神」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の産土神の言及

【鎮守】より

…また《江戸砂子》には,富岡八幡宮に〈当社四隅鎮守〉として丑寅(東北)の鬼門に蛭子神など境内の四方に鎮守神をまつったことを記している。なお平安時代から地方の荘園に領主の鎮守神を盛んに分祀したこともあってしだいに村落部にも鎮守信仰が普及し,近世には氏神産土(うぶすな)神をも鎮守と称するようになった。今日では〈村の鎮守〉とか〈鎮守の森〉が地域の氏神の社を意味するようになったが,やはり鎮守(神)という言葉には土地や建物を守護する地縁的な神格の意味が強く,その点で氏神や産土神の血縁的な神格の表現と微妙な違いが残っている。…

※「産土神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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