天井川(読み)テンジョウガワ

デジタル大辞泉 「天井川」の意味・読み・例文・類語

てんじょう‐がわ〔テンジヤウがは〕【天井川】

堤防内に多量の土砂堆積たいせきし、川床が付近の平野面より高くなった川。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「天井川」の意味・読み・例文・類語

てんじょう‐がわ テンジャウがは【天井川】

〘名〙 河床が周囲の平地よりも高くなった河川。ふつう高い堤防を築くと土や砂が堆積して生じる。滋賀県安曇(あど)川・日野川など。
※俳諧・一言俳談(1709)「既に咽ふえあやうかりけり 天井川わたれば髭に波かへる」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本歴史地名大系 「天井川」の解説

天井川
てんじようがわ

耳津みみつ山に発し、流域の山地に発する宮谷みやだに川・関屋せきや川・秋年あきとし川・福録ふくろく川・加古かこ川・和井田わいだ川・玉城たまぎ川・生田おいだ川・本谷ほんたに川・丸子まるこ川・湯船ゆぶね川・中河原なかがわら川などの支流を合わせ、釜山かまやま末光すえみつ両名りようみようと、末広すえひろ片島かたしま七宝しつぽうとの境を湾流、沼田ぬた川沿いを東流して和田わだ沖で沼田川に合する。文字どおり天井川の形態をなし、流域の諸村は土砂流出と堤防決壊による水害に悩まされた。

この川が天井川となったのは、上流と下流の落差が少ないうえに、中世、下流に干拓地が造成されて川が延長されたこと、慶安三年(一六五〇)に開かれた竹原たけはら塩田(現竹原市)への燃料供給のため、水源となる周辺の山地で乱伐が行われたことなどによると考えられる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「天井川」の意味・わかりやすい解説

天井川 (てんじょうがわ)

河床が周囲の平野面より高い河川をいう。河川が山地から平地に流出するとき,特に扇状地では河道の移動が著しく,はんらんして多量の砂礫を周囲に堆積させるので,耕地などをはんらんから守るために河道を堤防で固定すると,堤外地(河道側)に砂礫の堆積が進み,河床が高くなってはんらんの危険性が高まる。さらに堤防を高くしても河床の上昇は続くので,その後も堤防のかさ上げが必要となり,周囲の平野面よりも河床が高い河川が形成される。天井川は山地の開発により砂礫の供給量が急激に増加した場合にも形成されやすい。したがって,天井川は人間が直接手を下して形成した地形ではないが,人間の作用が間接的に働いて形成される地形であり,人工地形の一つといえる。平野下流部にみられる0m地帯では,地盤沈下により地表面が低下し,水面よりも低くなり,河道や水路は天井川化している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「天井川」の意味・わかりやすい解説

天井川【てんじょうがわ】

土砂の堆積で河床が高まって付近の平野面より高くなった川。河水のはんらんを防ぐための堤防の築造と,河床での土砂の堆積とが競合的に進んでできるもの。富山県常願寺川,滋賀県の野洲川など。
→関連項目奈良盆地

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「天井川」の意味・わかりやすい解説

天井川
てんじょうがわ

河床の高さが周囲の平野面より高くなった川。平野部で洪水を防ぐ目的で堤防を建設し、河道を固定化すると堤防間の河道で堆積(たいせき)が進み、平野への氾濫(はんらん)を防ぐために堤防をかさ上げするためにさらに河床が高まる。扇状地や背後に崩れやすい岩石からなる山地を有する川は荷重が多く、このような人工的地形をつくりやすい。富山県の常願寺川、滋賀県の草津川と愛知(えち)川などは好例で、中国の黄河では最大比高が10メートルに達する。

[髙山茂美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天井川」の意味・わかりやすい解説

天井川
てんじょうがわ
raised bed river

堤防内に砂礫が堆積し,周囲の土地よりも河床が高くなった河川。扇状地に堤防をつくって流路を固定すると,砂礫はその内部にだけ堆積するので,河床は急速に上昇し,既存の堤防では間に合わなくなる。砂礫の堆積と堤防のかさ上げの悪循環によって形成されるともいえる。六甲,比良山麓や甲府盆地などにみられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の天井川の言及

【扇状地】より

…水害の危険から身を守るため,人々は堤防を建設するが,そのことは河道の固定を意味し,土砂の堆積は河道内に限定されるようになる。その結果,周囲に比べて河床が著しく上昇し,天井川が形成される。扇状地を流れる河川の多くは天井川化しており,愛媛県東予市を流れる大明神川のように,川の下を鉄道トンネルが通るといった例もある。…

【はげ山】より

…山土の流亡はことに地質的に粘土質に乏しい花コウ岩の深層風化や第三紀の砂礫層で構成された丘陵に著しく,もっとも著しいのは近畿地方の諸盆地をめぐる山々と瀬戸内海沿岸部とであった。これら丘陵から流下する土砂によって,多くの河川は河道が高まりいわゆる天井川を形成し,洪水によって氾濫しまた沿岸耕地を湿地化するなどの影響がはなはだしかった。こうした丘陵地に砂防工事が施され,はげ山景観がほとんど消滅したのは,造林事業と燃料,肥料の変化に伴う,1960年以降の現象といえる。…

※「天井川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」